スズキ ジェベル250XC その10(総括・インプレッション編)


DJEBEL250XC

やはりジェベルがパフォーマンスを発揮するのは北海道キャンプツーリングだ。礼文島の北端にて。


DJEBEL250XC

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 大型のライトと17Lの大型のタンク。
 ロングツーリングやキャンプツーリングで最適。

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 割としっかり効くブレーキ。


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 油冷DOHC250ccのパワーソースはDR250R譲りでクラス最高のパフォーマンスを発揮する。


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 ツキのいい強制開閉キャブは後年のモデルでは負圧キャブに更新されたようだ。


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 サスペンションのヘタリが致命傷となり手放すことに。


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 最初からマフラーガードが付いている辺りもツーリングを意識している。


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 多機能メーターは殆ど使わなかったが、時計は便利。
 前オーナーがライトスイッチを増設していたが、拙僧は使わなかったな。


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 ダメ押しでヒューエルコックを修理したのも痛かった。


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 やはりジェベルにはキャンプツーリングが良く似合う。
 大井川キャンプツーリングがラストランになった。


DJEBEL250XC
 さようならジェベル250XC。


 それで充電系なのだが、修理することにした。ジェネレーターとレギュレーターで5万円也。拙僧としては大出血である。おまけにフューエルコックからガソリンが漏れてこれも修理。6000円の出血。それだけで済めばジェベル250XCは乗り続けるつもりだった。しかし、それまでもヘタリを感じていたリアのサスペンションがとうとうお亡くなりになった。完全にバネだけで減衰していて乗っていて危ない。おまけにスロットルを開閉している時は問題ないのだが、高速道路などでアクセルを一定にしているとキャブがボコボコ言うようになった。これを修理すると13万円くらいかかるらしい。流石の拙僧もお手上げですわ。ジェベルは最高のパフォーマンスを発揮するキャンプツーリングオートバイ(バイク)なのだが、これ以上の出費は無理である。泣く泣く手放すことにした。これなら最初から発電系の修理もしなければ良かったが、後の祭りである。
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 折角なのでジェベル250XCを総括してみたい。
 ジェベルの名はスズキの名機(?)SX200の後裔機として現れるジェベル200を起源としている。SX200は1980年代に登場した200ccのパワーソースを持つ4stオフロード車に15Lのビックタンクを搭載したものである。直接のライバルはホンダのXL250Rパリダカであろう。SXは燃費が良く、タンクを満タンにすると永遠に走れるとされていた。XL系のパワーソースはそれほど燃費が良くないので、ロングツアラーや貧乏人にとってSX200やジェベル200は福音となった。20馬力と速さを求めた単車ではなかったが、比較的軽量なのでダートや舗装林道ではテンポ良く走ることができた。そのパフォーマンスに応えたのか、スズキはスズキ初の4stオフロード車DR250Sをベースにしたジェベル250Sを送り出すが、ベースのDR250Sの評価がイマイチだったこともあってか、街中でジェベル250Sを見かけることは稀であった。ジェベルは125ccにも展開している。
 90年代になるとオフロード車も完成期に入る。ホンダはセル付きのXR250を出し、ヤマハはTT250R、カワサキはKLX250SRと言った具合である。スズキは後発の利点を生かして万全の態勢で1995年にDR250Rを登場させる。DR250Sで不評だったスタイリングを一新し、それなりにキレのあるものになった。批判の対象になった重さは継承したが、セル付きの使い勝手の良さとクラス最強の31馬力で相殺している。但し、XR250やKLX250SRのようなエンデューロで戦うマシンではなく、あくまでもストリートユースや林道が主なステージとなった。やっぱり重いからな。90年代は関東近郊にも走りがいのあるダートは沢山あったし、ロングツーリングを熱望する熱いファンも多かったから、各社もそれに答えたモデルを送り出した。ホンダはXR−Baja、ヤマハはTT250Raid、カワサキはKLX250ES、そしてスズキはDR250Rをベースにしたジェベル250XCである。XCはクロスカントリーの意味を持ち、運用範囲の広さを象徴する。このなかでKLX250ESだけはセルを追加しライトをやや大型化したものの、ビックタンクは採用しなかった。それでもカワサキファンは「KLXにセルなんて軟弱っすよ」として批判的だった。その他のモデルは倒立サスが正立サスに変更になったりしたが、基本的にはベース車を活かしてヘッドライトを大型化し、ビックタンクを組み合わせて高パフォーマンスのままロングツーリングを可能とした。拙僧はXR−Bajaにも所有したことがあるが、空冷のパタパタ走るフィーリングと極低速の粘りは魅力的なモノの、燃費がさほど良くないので思ったほど足が長くなかった記憶がある。それに比べるとジェベル250XCは本当に足が長かった。
 DR250Rの登場が1995年でジェベル250XCの登場が1996年である。当初からスズキはジェベルの企画を考慮していたのだろう。ちなみに拙僧の個体は’96モデルだから最初期のものだ。パワーソースはDR250Rの油冷DOHCの31馬力のママ。ライバルも30馬力なので大した違いはないのだが、その辺に意地を張るのがスズキらしく好ましい。低回転から高回転までブンブン回るエンジンで空荷で100km/hオーバー、キャンプ装備積載時でも90km/h+αまでは元気よく回る。かなりノイジーでバイブレーションも激しいが、パフォーマンスの為なら嫌にならない。最近の250ccロード車にも試乗したのだが、街乗りレベルではジェベル250XCの方が打撃力がある。よく、ジェベル250XCを紹介したコンテンツで低速がプアだと指摘されるが、それは同期のレーススペックのライバルと比べての話だろう。ジェベル250XCはエンデューロで戦うマシンではない。ストリートですり抜けや信号ダッシュで不足を感じることはない。但し、上り坂での追い越しや高速道路ではパワー不足を感じるが、そこは250ccのオフロード車としての限界だろう。また、住宅密接地で音が心配な方は気を使うかもしれない。標準でハンドルガードとキャリアが付いているのがロングツーリングを想定していて嬉しい。拙僧の個体はキックスターターが付いていたが、1999年モデルまではオプションだったらしい。ジェベル250XCのバッテリーはプアなのでキックスターターは必須である。
 何といっても最大の特徴は17Lのビックタンクである。XR−Bajaは14Lでそれほど燃費が良くなかったので意外と足が短かったが、ジェベル250XCなら余裕で300km以上を無給油で走れる。これは北海道キャンプツーリングなどでは最高のパフォーマンスを発揮する。実際のところ、北海道はそこここにガソリンスタンドがあるのだが、紀伊半島とか本当にガソリンスタンドが寂しい場所は多い。全日本的にキャンプツーリングに最も適した単車の一つである。バッテリーがプアなのが玉に傷だが、前述の通りキックスタートが付いていれば安心。実際に拙僧は北海道キャンプツーリングの半ばで充電系の故障が起き、セルが回らなくなったがキックスタートで凌いだ。燃費は26km/L前後で、拙僧のように峠で回す割には良い方ではないだろうか。ジェベル250XCは中回転から高回転の伸びがスムーズなのでオンタイヤを履くと峠でもパフォーマンスを発揮する。ステップをするような走りも安定的であり、その気になってしまう。この種の単車にオンロードタイヤを履くのは例外的と思われるかもしれないが、殆どの走行は舗装路だし、本気でオフロードをアタックしたいのならお勧めしないが、走れないことはない。路面に与えるダメージが少ないと考えるとオフ車にオンロードタイヤは有りだと思う。
 オフロード車の楽しみは自分で整備できる裁量が多いことだ。拙僧はキャブやエンジンのヘッドを開ける程の技量は無いが、タイヤくらいは自分で交換する。オフ車のタイヤはネット上で廉価に流通しているので金銭的な負担は低い。具体的にはIRCのオンロードタイヤが1本送料込みで6800円くらいである。フロントもリアもそれ程、価格は変わらない。オンロード車だったら250ccクラスでも前後で4万越えだから、これは大きい。プラグ交換はタンクを外さないとできないが、バイク屋の仙人のような方はタンクを外さずにやっていた。なので、やろうと思えば器用な方なら出来るのだろう。オイル交換も難しい仕事ではないが容量が1.1Lなので1Lの缶が2本必要だ。よほど走りこんで頻繁にオイル交換をする方なら別だが、拙僧のように年に1回程度しか交換しないモノとしては、標準的なオイルを選択してもバイク屋で交換するのとどちらがコスト安か悩ましいところである。
 1998年にGPSを登載したジェベル250GPSが登場する。拙僧は大して関心は無かったが、これは当時画期的な事だった。1999年も出るまでは強制開閉キャブを搭載し、2000年から負圧キャブに変更になった。恐らく、この頃から厳しくなった二輪車への排ガス規制を見据えたものであろう。やはり強制開閉キャブの方が付ツキがよく、実際に排ガス規制に対応する以前のモデルをあえて探す方も少なくないようだ。2000年モデルからキックスターターが標準装備になる。21世紀にもなってキックでエンジンをかける方はスカチェーン系の方々を除いて少ないと思うのだが、よほどバッテリーに関して不満があったのだろうか。XR−BajaやTT250Raidは比較的早々に姿を消すのだが、2000年にDR250Rが生産中止になって以降もジェベル250XCは生産を継続する。最終的に生産中止になったのは2008年で12年ものロングセラーとなった。DR−400Zの方が後まで残るのだが、400ccのオフロード車はちょっと特殊だし、実際のところスズキのオフロード車としての本気モデルはジェベル250XCが最後となる。グラストラッカー等のオフロード車風とは格が違うからな。
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 現在はスズキに限らず、全てのメーカーを含めてもジェベル250XCのような単車は無い。これはオートバイ人口の減少もあるが、実際のところ関東圏のダート道は激減しており、オフロードを走る条件が少なくなったことも理由の一つだろう。北海道は例外である。
 拙僧もBMWのF650GS辺りに魅力を感じたこともあるが、粘り強い戦闘力はジェベル250XCの方があるのではと思う。キャンプ積載時に林道の行き止まりでUターンするのに重量車では想像するのも嫌だ。実際、90km/hもでれば大抵の場合、四ツ輪を抜くには十分だ。高速道路のパフォーマンスはどうしても適わないが、拙僧が高速道路を使うのは例外的だし、その為に普段使いに影響があるのは好ましくない。
 ただ、やっぱりロングツーリングになると250ccでは疲れが隠せない。なので、若く(拙僧は若くないけど)体力のあるうちに250ccのオフロード車を満喫してほしいな。



(了:2015/11/14)

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