ニコン AD3(ピカイチ3)について


NikonAD3
ピカイチ3の北米仕様。45cmまで寄れる粋な奴。

☆ジャンク度☆
不具合無し
撮影可能


NikonAD3 NikonAD3
 3群4枚と奢ったレンズ。45cmまで寄れたらマクロの記載は伊達じゃない。


NikonAD3 NikonAD3
 「One・Touch」というのはピカイチシリーズの北米でのブランドのようだ。
 どこにもモデル名が記載していないので、特定に手間取った。


NikonAD3 NikonAD3
 メイド・イン・ジャパンが嬉しい。
 ちゃんとフィルムの途中撒き戻しができる。


NikonAD3
 緩やかなカーブを描くグリップは効果的。


NikonAD3 NikonAD3
 この安っぽいフィルムカウンターがキュート。
 液晶パネルは味気ない。


NikonAD3 NikonAD3
 当然光学ファインダーである。
 デート機能非搭載なのであっさりした背面。
 国内仕様だとデート機能が付いてごちゃごちゃしている。


NikonAD3 NikonAD3
 ビハインドシャッターが安っぽい印象を受ける。
 しかし、レンズはニコン、手を抜いていない。


NikonAD3 NikonAD3
 電源がCR−2Pなのが、現在となっては制約である。


 本カメラの特定には苦労した。モデル名の記載がないのだ。フロントパネルに「One・Touch」と記載があるので、そういうペットネームなのかと思ってネット検索したら、どうもそうではない。なので、ニコンの単焦点レンズ搭載コンパクトカメラを総アタリしたら、どうもニコンAD3(ピカイチ3)に該当しそうだ。「One・Touch」というのはピカイチシリーズの北米での愛称のようである。国内仕様のAD3は「オードデート」の略称であるらしく、日付機能つきでで、ボディ上部にも「AD3」の記載がある。しかし、本カメラは日付機能は省略し、ボディ上部には何も記載がない。北米人は実利主義だし、ケチだから機能を削って価格を安くしたのだろう。
 ニコンのコンパクトカメラの誕生は1983年のL35(ピカイチ初代)にさかのぼる。このことはニコン原理主義者に少なからずショックを与えたようだ。何しろ、ニコンと言えば(当時は)一眼レフのような高級カメラ専門のメーカーだった。そういうメーカーは他にはペンタックスくらいしかなかった。キヤノンのようにキャノネットで上手い商売をしてなるものかというフォロワーサイドには気位があった。しかし、ニコンだって商売で儲けなければならない。時代はすでにAFコンパクトのムーブメントで写真を撮るコンシューマ層が広く浸透していた。ニコンとしてもニコンブランドで発売する以上、相応しいAFコンパクトカメラでなければならないと気概があり、レンズは贅沢な4郡5枚のゾナー型とした。5枚のレンズを搭載したAFコンパクトカメラは、他にはやはり一眼レフで気を吐いていたペンタックスのオートロンくらいだ。それも、ライバル達が38mm辺りで妥協しているのに対し、きっちりと35mmにしている。鏡筒にはフィルター径が切ってあり、ポップアップするフラッシュ(スピードライト)を手で押し込むとスローシャッターが切れると言った凝りようだった。ニコンとしては一番よく写り、一番売れるカメラとして「ピカイチ」のペットネームを与えた。しかし、史実の通りピカイチシリーズはキヤノンのオートボーイシリーズの牙城を崩すに至らなかった。理由ははっきりとは分からないのだが、キヤノンの商売がうまかったのと、ピカイチの値段がちょっと高かったのだろう。樹脂ボディの質感の高さや前述の見え辛い利点も、コンシューマーにはヒットし辛かったようだ。
 その後、ニコンもAFコンパクトカメラのコストダウンを図るのだが、伝説的にニコンのロワーターゲットへのアプローチは上手い物ではなかった。LTWAD(ピカイチテレ)なんてオートボーイテレより、よっぽど親切で便利でよくできていると思うのだが、ジャンク駕籠の出現率からすると販売面では苦戦していたようだ。ニコンのコンパクトカメラのプライオリティとして接写の強さがあり、これは後のクールピクスまで受継ぐ伝統となった。また、防水機能つきのピカイチカリブなど、ニコンのコンパクトカメラは冒険的で、何しろ写りがイイから、分かっている方には評価を受けていたようだ。
                           ☆            ☆
 4郡5枚の35mmF2.8で始まったピカイチシリーズだが、2代目の「Newピカイチ」では3群4枚の35mmF2.8とコストダウンを図っている。もっとも、初代の5枚レンズは評価が分かれるところで、拙僧個人は4枚レンズの後裔機の方が好ましいと感じている。廉価モデルのL135AFでは35mmF3.5と更にコストダウンが図ったが、写りに遜色は無い。本カメラのレンズは3群4枚の35mmF2.8を踏襲している。これもゾナー型だと噂があるが、これと言った根拠はないようだ。レンズ銘板には「MACRO」の文言が躍っており、実際に45cmまで寄れる。登場が1987年だから大したものである。現在のデジカメ時代とはわけが違うのだ。写りは流石のニコンである。プレスト400で晴天下を撮るとカリカリで硬調ながら諧調のメリハリがある。拙僧の大好きなタイプのレンズだ。惜しいのはプレスト400の終了であり、後裔となるようなフィルムにいまだに出会えていない。プレスト400の終了は少なからず、拙僧のフィルムカメラへの愛着と写欲を減退させた。
 本カメラの欠点はフラッシュ発光禁止モードが無いことだ。基本的にオートカメラで、何かを設定するようなカメラではないのだが、スナップシューターとしては不意のフラッシュ発光は致命的になるケースが考えられるので、実に惜しい。
                           ☆            ☆
 同クラスのカメラに3枚レンズが多い中、贅沢に4枚レンズを採用した点にもニコンの気概を感じる。実際、写りは素晴らしい。それで、本カメラのポテンシャルが正当に評価されていたのなら嬉しいのだが、1980年代の拙僧はカメラ民族としての自覚が無かったので分からない。
 200〜500円くらいで転がっているので、ぜひ拾ってモノクロを試していただきたい。

    では、撮影結果をご覧頂きたい。

(了:2015/1/14)


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