キヤノン IXY(初代)について


IXY

☆ジャンク度☆
フラッシュ不良
撮影可能


 もはや風前の灯火となったAPSですが、過去に一瞬だけ輝きを放った事があります。それは本カメラ、IXYの登場です。 その輝きは、当時まだカメラ人民としての共闘に参加しておらず、いかにステップを削るまで単車を寝かすかだけに一喜一憂してた拙僧の所にも届く勢いでした。
 実際、IXYの登場はちょっとした社会現象になっていたのですね。その頃、直線を基調としたデザインや、金属外装がずしりと重く冷たく握る手に伝わるボディのカメラは存在しなかったのですね。そして、そのコンセプトがブーンやアサヤン世代の若者(と若者を気取りたい壮年層)に「俺の見つけたデットストックチノパン」如くの存在として受け入れられたのでありました。丁度、クロムーツやビンテージをイメージに、SRやスティードの改造オートバイが待ちに溢れ始めた頃と一致するような気がします。ちなみに、TWが流行るのは、前途のオートバイが2回目の車検を迎えた頃と一致するのではと拙僧は思っています。

IXY
2倍ズームレンズを搭載。起動スイッチはフロントパネルにあります。

IXY
電池室の蓋はぽろっと取れるタイプ。落としてなくす可能性もあるし、使いかっても良くないなあ。

 APSというフィルムフォーマットが登場したのは、ようやくデジカメが手に入れる事が可能な価格で発売された頃でした。勿論、その当時のデジカメはよくて30万画素級で、当時でさえ観賞するには温かい目を必要とした物でした。そもそも、APSは銀塩35mmフィルムと、まだまだ高額で安定した画像を得る事のできない発展途上であるデジカメの間を埋める物として登場したのです。実際、APSフィルムからスキャナーを仲介して画像データを送信するシステムや、同じくスキャナーを仲介してTVに画像を映し出すシステムが、特にフジフィルムから大々的に発表されていたと記憶しています。このTVに画像を映し出すことは、当時のデジカメにも重要な機能として搭載されていたんだけれども、今となっては若き頃の淡き思い出でしかないと拙僧は思うな。
 拙僧がIXYに距離をおいていたのは、まずAPSに対する不信感でした。そもそも、拙僧は懐古妄想があるので新しいメディアを敬遠する傾向があるのですが、それはそれとしてもデジカメの性能向上はAPSの普及を上回ると予想していたのです。拙僧の言う普及とは、0円プリントのジャンボがAPSを扱うよりも早く実用となるデジカメが登場するのではということでした。拙僧はIT産業の片隅で御飯を食べている関係で、多少そいう方面にはアンテナが利きいたのです。もっとも、それから10年もしないうちに700万画素のコンパクトデジカメが出回るとは想像もしていませんでしたが。
 もう一つ、拙僧の目を曇らせていたのは、ナウなヤング(死語)に向けられた分かりやすいコンセプト、例えば某反エグゼクティブ階級のスポーツ選手である気のすかない若者をイメージキャラクターとして起用するなど、華やかなショウビズ世界とは対照的な我が身には鼻持ちなら無い存在として憎らしく思えたのでございます。
 ちなみに、ニコンが起用していたイメージキャラクターは、アムロが抜けたスーパーモンキーズたるMAXでした。マーケティングとしてどちらが正しかったかは、拙僧が言うまでも無いでしょう。

IXY
不動のフラッシュ。

IXY
撮影時の諸情報は主にボディ上部にあるボタンで行います。背面にはフレームモード切り替えスイッチとフラッシュモードの設定スイッチがあります。

 さて、あれから10年が経ち、メロンソーダとチリドックだけで生きていけると思っていた拙僧も体のあちこちがへたり、また世帯ももつ身分になるとあの憎かったイメージキャラクターも冷静に脳の中から粛清できるようになりました。それと同時に素直に受け止める事のできなかったIXYの存在も認める事ができるようになったのであります。何しろ、ジャンク籠で悲惨な価格帯で転がっているそれが、まるで自分を見ているようで忍びないのであります。ペットショップで寒風にさらされている大きくなりすぎたうさぎみたいなものです。思わず3台のIXYを救出してしまいました。

IXY
電源を起動したところ。ボディの小ささがわかります。
本来はフラッシュがポップアップするのですが、本カメラは不動です。

 以前、初代IXYをジャンクで購入した事があるのですが、そいつはどう言う訳だか前群の裏に水没した後のようにほこりがこびり付いている物でした。この手のカメラは人間の手で分解できない設計となっているのか、結局レンズ前群をはずす事ができないので破棄してしまいました。手元にあるIXYは全て最近短いサイクルで手に入れたものです。内訳は初代IXY、IXY220そしてIXY330の三台です。今回は初代IXYを試用しました。  まずはフィルムを入れないで電源投入するとレンズカバーが開き、鏡筒がせり出てきます。鏡筒の外径が小さいので頼りなく感じてしまいますな。なにか物足りなさを感じているとフラッシュがポップアップしていないのです。拙僧は基本的にノーフラッシュで撮ることにしているので問題は感じませんが、初代IXYのフラッシュの不具合はデフォルトとされているようです。
 この世代のカメラになると完成度も高く、特に撮影時に意識するようなポイントは無いのですが、電源を切るとフラッシュモードがリセットされてしまうのは一寸不便ですねえ。
 APSの特徴として撮影途中のフィルム交換があるんですけど、初代IXYは対応していないんですねえ。14枚ほど撮影した時点でフィルムを取り出したら、それで撮影終了になってしまいました。貧乏根性で40枚撮りフィルムを3台のIXYで使いまわすつもりだったんですけど・・・。ちなみにIXY220とIXY330は途中交換に対応しているようです。
 何時もは0円プリントに出すんですけど、撮影枚数が少ないのでキタムラで同時プリントしてもらったんですが、なるほど色調の補正も程よいプリントであります。シャープネス等をライカ判のプリントと比べるのはナンセンスだと思われますが。

 では、作例を見て頂きたい。

(了:2005/10/4)


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