フジフィルム テレカルディアスーパーについて


TELECARDIASUPER

☆ジャンク度☆
不具合無し
撮影可能




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 フジノン銘を与えられた2焦点レンズ。
 テレ側にすると勝手にフラッシュが起動する。

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 フラッシュ発行禁止が可能なだけアリガタイ。


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 大柄でブサイクなカメラである。


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 立派なグリップを形成。
 電源スイッチは背面に設置。


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 レンズの焦点距離の切り替えは前面。
 大雑把なスタイリングなので、使いやすい。


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 もっとも、操作と言えば電源を入れてファインダーを覗きながらレリーズボタンを押下するだけだ。


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 フジフィルム製のコンパクトカメラ伝統のDIL機構。
 フィルムの装填にハードルが高い方々がいらっしゃった。


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 どうも電話番号が刻み込んである。1987年に53800円もしたカメラなのだ。
 電池は手に入れるのも面倒なCR−P2。


 1977年に革新的なカメラがコニカから登場した。世界で初めて実用量産AFカメラとなるC35AF(ジャスピンコニカ)である。多くの伝説を語り継いでいるカメラだが、モーターを一切搭載していないのも特筆だろう。AFユニットは巻き上げレバーでチャージするバネで駆動していたのだ。資源に瀕した時の日本人の発想は素晴らしい。もっとも、これが戦時だと人間機雷だとか竹やり突撃になってしまう可能性もあるから、我が国は戦争とかかわらない方がイイだろう。カメラの方は瞬く間に進化し、1979年のオートボーイ(初代)では基本的には全自動化している。初期の頃はAFの精度もイマイチだったが、1983年に登場のオートボーイ2では精度も高まり、1986年に登場したオートボーイ3ではモダンなAFコンパクトカメラとして一定の完成度に至った。ちなみに1985年にはキヤノン初のAF一眼レフカメラであるT−80が登場しているが、このAFユニットの性能はとても実用には程遠く、ハッキリ言うと失敗作だ。キヤノンの判断は素早く、1987年にはマウントも一新し、申し分の無い新型AF一眼レフカメラのEOS650を投入し、現在のEOSデジの源流となっている。T−80の出来の悪さは不思議な程なので、社内のFDマウント固持派一掃の布石だったのかもしれないな。
 AFコンパクトカメラは実用に充分であったが、まだレンズが単焦点だった。EOSシリーズは初めからパーフェクトなズームレンズを用意したから、その点では叶わなかったことになる。いや、T−80もAFズームレンズを一応は用意していたけど。ズームレンズをコンパクトカメラに搭載するのは、案外とハードルが高かったようだ。コンパクトカメラに搭載するにはコストが掛かり過ぎる理由もあっただろう。また、コンパクトなズームレンズを設計するのも難しかった。当時のコンパクトカメラは、現在のコインケース程のコンパクトデジカメからすると信じられない程に大柄なのだが、その上ズームレンズを搭載するとなると、レンズ枚数が増えるから重くもなる。軽くするには、どうしても明るさ(F値)を犠牲にしなければならなかったが、当時はISO400のフィルムだって高速フィルムだとされていたし、ISO800とかISO1600のフィルムは一種の特殊フィルムだった。そんな事情もあって二焦点レンズを搭載したAFコンパクトカメラが一定のニーズを形成した。これは広角レンズにテレコンを内蔵し、望遠レンズと切り替える物であり、焦点距離は2種類しか選べないが、後年に指摘されるようにズームレンズだって広角側の端と望遠側の端しか滅多に使わなかったから、理屈に合っていた。大抵の場合は広角側はそれなりに良い写りを実現していたが、望遠側の方はメーカーやモデルによってポリシーがマチマチでハッキリ言っておまけ同然のものもあった。つまり、望遠側が顕著に写りが悪いのだ。しかし、ニコンのLTWAD(ピカイチテレ)のように40cmまで寄れる簡易マクロやモノクロ液晶パネルに凝っフォーカスインディケーターを表示したり、それなりにメーカーも苦心して遊び心を演出していたのだ。
                 ☆                ☆
 本カメラが驚いてしまうのは価格である。なんと、1987年 に定価ベースで53800円なのだ。それは、買い手にサービスもしようものだが、日本カメラが価格で世界を圧倒したとはいえ、まだまだカメラは高価なモノだったのだ。それにしてはスタイリングがあまりにもカッコ悪いが、オートボーイテレだって、なかなか大胆なスタイリングだから本カメラが特筆してカッコ悪いとは言えない。もっとも、フジフィルムのカメラは総じてスタイリングは褒められたものではない。
 レンズは広角側が35mmF3.5と望遠側が70mmF6.3の二焦点を切り替える。広角側が3群3枚で構成し、望遠側が6郡7枚で構成するそうだから、4枚玉のテレコンを噛ましているのだろう。望遠側で70mmは物足りない気もするが、LTWAD(ピカイチテレ)は65mmだし、オートボーイ・テレ6は60mmだから、標準的なレンジであろう。もっとも、オートボーイ・テレ6はハーフ判で撮れたりして、なかなか突っ込みどころの多いカメラである。資料によると専用のテレコンが存在し、90mmの撮影が可能だ。最短撮影距離は広角側で70cmだが、望遠側では50cmまで寄れる。専用のクローズアップレンズも存在したようだ。二焦点切り替えはレンズ横のスライドスイッチで行い、望遠側だとフラッシュが自動的にポップアップする。恐らく、レンズが暗いからだろう。フラッシュ発光禁止ボタンが存在するから、スナップ撮影で不意にフラッシュが発行して立場を深刻化しないですむ。ボタンは小さく押し辛いが、フラッシュ発光禁止ボタンを省略したカメラも多いから、ありがたい話である。電源スイッチはは背面で、スライドするとレンズカバーが開いて撮影可能状態になる。
 基本的にはファインダーを覗いてレリーズボタンを押下するだけの、ポイントアンドシュートカメラである。特徴としてはフジフィルム伝統のDIL機構を搭載している。これはフィルム装填を容易にする工夫である。裏蓋を開けても途中でロックし完全には開かず、その隙間にフィルムを落とし込み、裏蓋を閉じるとモーターで巻き上げてフイルムの装填が完了する。ライカ判フィルムの装填は意外とハードルが高いらしく、その失敗をメーカーは危惧し古くから様々な工夫が生まれた。キヤノンのQL機構などは、見た目のインパクトからフィルム装填に慣れた我々からすると、逆に不安になる。DIL機構はよくできたものだが、それでも稀に失敗することがある。結局、カメラ屋やDPE屋でフィルムを買う際、店員に装填をお願いするニーズは無くならなかったようだ。APSはその解決策であったが、その頃には更にスマートなデジカメが登場する。
                 ☆                ☆
 前述の通り、望遠側はおまけ程度で写りが明確に劣るカメラも多いのだが、本カメラはなかなか検討している。フジフィルムの二焦点カメラでもカルディアトラベルミニOPあたりの望遠側は褒められたものではない。本カメラはボディサイズの小型化も諦めているので、レンズの性能にも余裕があるのかもしれないな。
 本カメラの登場の翌年にはオートボーイがズームレンズ化している。それでも、二焦点カメラはユニークなものが多く、憎めない所があって拙僧は好きでちょくちょく集めている。今(2014年)ではジャンク駕籠で500円以下だ。しかし、フィルム代や現像代が高くなってしまったので、運用には勇気が必要だ。
 


 では、撮影結果を見て頂きたい。

(了:2014/5/23)


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