フジ写真フィルム フジカ 35FS


Fujica35FS
見た目よりも切れ者のフレンドリーなカメラ

☆ジャンク度☆
不具合無し
撮影可能


Fujica35FS Fujica35FS
 樹脂製の軽量ボディ。距離計は非搭載でゾーンフォーカスである。
 多分「フジカ」ブランドのカメラとしては最後の方なのでは。


Fujica35FS Fujica35FS
 フジノンブランドの35mmF2.8。
 このクラスのカメラは38mmが多いのだが、

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 フラッシュマチックが特徴なのだ。

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 2速のシャッター速度優先AEがいじらしい。

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 電池蓋に遊び心が表れている。

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 外観は実にシンプルなカメラである。

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 軍艦部をなるべくフラットにするべく、背面に隠れた巻き上げレバー。

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 地味だが中々の実力派だ。

 本カメラは1971年に登場した標準的なファミリークラスのカメラである。距離計を搭載しないゾーンフォーカス機であり、2速の機械式シャッターによるシャッター速度優先AEで露出を制御する。フロントパネルにはフラッシュ光をイメージしたマークと共に「Hi−FLASH」の文字が躍る。つまり、本カメラはフラッシュマチックを搭載するのだ。フラッシュマチックというのを拙僧は真面目に使ったことが無い。なので感覚的には分からないのだが、フィルムの感度とフラッシュのガイドナンバーをカメラに設定しておくと、フォーカスリングの撮影距離と連動して絞りを適切な値に自動調節する機能である。多分、GNニッコールとかと同じ理屈なのだろう。拙僧は物心ついたころからピッカリコニカが家に転がっていたので体感的には良くわからないのだが、当時はフラッシュ撮影と言うのが敷居の高いものだったらしい。ガイドナンバーを手で設定するのだから、フラッシュのパワーが設定の範囲内のガイドナンバーであれば、どんなフラッシュでも使用できる。幾つかのカメラはその辺りを自動リンクする専用のフラッシュが用意されていたが、本カメラは特別工夫を施してはいないようだ。
 ライバルはコニカC35E&Lとなるのだろう。これはコニカ C35フラッシュマチックから距離計を除いたものである。コニカC35E&LはワンラインのプログラムAE専用機である。ベースのC35は当時としては思い切った小型化に成功していた。初期のデジカメもそうだが、「レンズ交換のできない距離計搭載レンズシャッター機」では長すぎるので「コンパクトカメラ」と称しているが、実態はコンパクトでもないし、金属外装時代の物は重さもあった。ハーフ判にしてコンパクトなボディを実現するカメラもあったが、これはちょっと亜流としたい。本当にカメラがコンパクトになったのはローライ35とうのが定説だが、「女子供が気軽に携帯できる」というコンパクトカメラにフィットするプロパティを実現したのは、1968年に登場したコニカC35と言っていいのではないだろうか。「女子供路線」の理想モデルはオリンパスXA2の出現で完成したと思っているのだが、常識的なスタイリングを維持し、飛躍的な小型化を成功させた点においては、コニカC35は立派な物である。だって、そのちょっと前はコニカEEマチックデラックス2だったのだ。これは、マツコデラックスさんくらいなボディマスがあるよな。コニカEEマチックデラックス2の機能をそのままに、ハーフ判のコニカアイに詰め込むというのは、コニカの意図的な道筋であったらしい。ちょっと凄い革命的なことだよなあ。流石、「ピッカリコニカ」や「ジャスピンコニカ」で世間を揺るがしたブランドである。コニカC35の成功は他社にもおよび、リコーからは恥じらいも無く模倣したエルニカFを出している。リコーを弁護すると、リコーは伝統的にスタイリングやコンセプトがユニークであり、時折「大丈夫かなあ」と心配する程、前衛的なカメラも出した。現在もGRデジタルやペンタックスブランドの使い方でユニークなブランドイメージを構築している。そのリコーですら焦ったのがコニカC35の登場なのだな。
 それでキヤノンもキャノネットを小型化したり、ヤシカもレンズは明るいが薄らデカいエレクトロ35シリーズをコンパクト路線に修整してエレクトロ35FCを出したし、思い切って距離計を排除して、段違いにコンパクトなエレクトロ35MCを出した。かつては高級品だったカメラもだいぶ安くなったし、テクノロジーの進歩でスキル的なハードルも下がった。そして小型化があり、コンパクトカメラが本当にコンパクトになったのだ。1960年代から1970年代の前半は、その後のカメラの基本的なカテゴライズを決定づける程の大きな動きがあったのだろう。拙僧が生まれるかどうかの時代だから、ちょっと間違っているかもしれないが。当時のフジフィルムの陣営はフジカ35Mや35SEから始まる高級路線と、ベーシック層を担当したフジカコンパクト35の2系列で戦線を構築し稚ていた。廉価層向けにフジペットやフジカオートマジックを戦線に投入したのは、フィルムの供給量を増やすというフジフィルムの台所事情が見えるが、基本的にはそういう廉価路線は継続したシリーズにはなっていない。フィルムの性能が上がって、カメラの基本性能を尊厳の維持としてギリギリの線まで削り取った安カメラが流通するのは、もうちょっと先の話である。
 本カメラは、カメラがどういう層にどういう形で消費されていくのかが変わりつつある難しい時期に登場した割には呑気なカメラである。勿論、カメラとしての素性はイイ感じである。コニカC35やヤシカエレクトロ35MCに比べると画期的な小型化を狙った戦はなさそうだが、樹脂製ボディは軽量だし、スタイリングがシンプルなので携帯するのに気軽だ。ファインダーの見え具合は良好だが、あまりお金がかかっているとは思えないな。それでも、露出とフォーカスインディケーターをアナログ的な針で確認できるので困らない。距離計を搭載しないが、あの距離計イメージを重ねてピントを合わせるのを、メカニズムに興味のない方に説明するのはちょっと面倒なのだ。いっそ、ゾーンフォーカスの方がイイだろう。それに35mmのフジノンレンズはちょっと珍しい。大抵の場合は38mmである。最早、フジフィルムというかフィルムカメラの最後の砦であるクラッセは38mmである。ちなみに、コニカも伝統的に38mmが多いな。何か設計上で35mmよりも38mmの方が楽なのだろうか。実は両方とも、作っているのは同じ会社で同じものだ、何ていうことはフィルムカメラが時代を謳歌していた70年代の話だから無いだろうな。
 鏡筒の先端には赤い太陽マークと緑色の太陽を横線3本で隠したマーク、それに数字を刻んでいる。赤が晴れを想定していて、シャッター速度を1/250に設定する。緑色のマークは曇りを想定していて、シャッター速度を1/30に設定する。つまり、本カメラはかなり省略しているが2速のシャッター速度優先AEを搭載しているのだ。通常使うフィルムがISO400だという方もいらっしゃるだろうから、1/250をベースとして絞りをカメラ側が設定してくれた方が都合がよいだろう。外見がちょっとプアな感じがするわりには、芯はしっかりしたカメラなのだ。数字はGNを設定し、上記のフラッシュマチックを可能とするのだろうが、拙僧は使わないし、関心もあまりないので触れないことにする。現在の運用でちょっと困るのが、やはり電池だろう。本カメラは「H−D」とか「MR9」と呼ばれる水銀電池を採用している。既に水銀電池が生産終了になって長い時間が経過しているから、よっぽどラッキーでもなければ見かけることは無いだろう。拙僧の約15年間のカメラ人生の中で、売れ残りのMR−9を手に入れた事は2回しかない。正確に言うと1回目はスーパー8のシネカメラをハードケース他付きのフルセットで買った時に入っていた。2回目はリサイクルショップでソニーの物が50円だった。これは大切に使っている。同じ形のアルカリ電池がカメラ専門店で売っているが、1個600円くらいして高いのだ。ネットオークションでLR44が使えるアダプターが400円前後で出品されているから、どちらが得かは考える必要があるな。正確には水銀電池とアルカリ電池は電圧が違うので露出に影響がある。しかし、ネガフィルムで撮るなら対して気にしなくてもいいんじゃないかな。少なくても、拙僧は水銀電池仕様のカメラにアルカリ電池を詰めて、露出に問題を感じたことは無い。カラーでもモノクロでも同様だ。そもそも、40年以上前のカメラなのだから、ポジをつかったり、シビアな露出を期待する方は、この種のカメラは使うべきでない。ちゃんと整備されて任意の露出を設定できる上位クラスのカメラを手に入れた方がイイだろう。無論、価格帯は20倍くらい違うだろうが。
                ☆           ☆
 フジフィルムのカメラのスタイリングは個性的な物が多い。フジカAUTO−Mとかフジカ35EEとか、印象に残るがあまりスマートではないな。そんなフジカの中で、本カメラと後裔機のフジカGPは、割と普通な日本人の顔をしている。これがフジカGEになると、ちゃんとごろんとしたスタイリングになって、特徴的な印象になるのだが。
 結局カラーネガ1本しか撮らなかったのだが、さっぱりとしていい写り具合だった。割と有名なのは本カメラの電池蓋はスマイルマークになっている。この辺りからも、本カメラがベーシック層を意識しているのが分かる。本当に合理化してしまえば、2速のシャッター速度優先などより、簡単なプログラムAEにしてしまった方がコスト的にも見合うと思うのだが、あえてそれをしない大らかな感じが残っているのが、本カメラのキュートなところである。
 拙僧は基本的に「いいひと」というのを評価しないが、この「いいカメラ」は良い友人になれそうだ。

 では、撮影結果を見て頂きたい。

(了:2013/7/5)


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