チノン GLXテレについて


ChinonGLXtele

☆ジャンク度☆
電池室大いに腐食
なんとか撮影可能


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チノンの二焦点レンズはわりと珍しいのではないか。


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こんな感じでレンズが繰り出て望遠モードになる。
切り替えが手動レバーなのが粋だ。


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DXコードには非対応。


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物凄く電池室が腐食していることに気付かなかった。


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電池接点を削って無理やりガムテープで電池を固定。
なんとか撮影可能になった。


 世の中には熱狂的なチノンファンという方々がいらっしゃる。ここまでフィルムの供給が厳しくなった現在では知らないのだが、一時期まではどうってことのないMFコンパクトプラカメラでも、チノンだとちょっと割高な値段がついていたものだ。そういう拙僧もチノンだと、ちょっと心が動いてしまう。なので、この二焦点のチノンを見つけた時にはロクに調べもせずに買ってしまった。価格は確か324円だったと思う。Hオフで324円というのは安いので、何かしらの問題を抱えていると気付くべきだったな。
 いや、実際には店頭でも電池室が開けられないことは気づいた。しかし、この頃のカメラは素人が簡単に電池を替えることができないようにネジで固定しているものもあったから、その類かと思ったのだ。ところが、実際はそうではなかった。電池室が入れっぱなしの電池の液漏れで大いに腐食していたのである。これには拙僧も参った。しかし、324円の大枚をはたいているのだから、そのまま引き下がるのは惜しい。もはやプライヤーで引っ張るくらいでは電池は抜けなかったので、電池室を破壊して無理やり引き抜いてしまう。奥の電気接点を磨くのもヤスリが入らないので更に電池室を破壊する。この際、撮影ができればどうなろうと知ったことではないのだ。はたして電池を積めて、アルミホイルとガムテープで通電する様にしたら、ひとまず動くようになった。ガムテープの補強では不十分らしく、電池を押し込むように強めにカメラを指で挟みこむようにしないと満足に通電しないのだが、兎に角、撮影できそうなので、これで良しである。かなりブサイクなルックスになったが、動くのだから気にもならない。
                        ☆             ☆
 本カメラの情報は少ない。もしかしたら、あまり国内では流通しなかったのかもしれないな。なので主な情報源はCamera−WikiやCAMERA−PEDIAとする。よくわからないカメラの情報源としては最後の砦だ。
 大きな特徴はその二焦点レンズである。現在ではちょっと説明が必要なのだが、ズームレンズが普及する前に二焦点レンズを搭載するコンパクトカメラが市場を形成していた時期がある。キヤノンなども熱心だったし、ニコンでも製品群がある。これは基本的には広角系の単焦点レンズなのだが、ボタンで切り替えると自動的にレンズが繰り出し、内蔵したテレコンを噛まして望遠(準望遠)でも撮影出来るという代物だ。2つの焦点距離が選べるので二焦点レンズなのである。ズームレンズも初期のものは小型化が実現できず、ボディも大型でフジフィルムのDL2000みたいになってしまったし、小型化が可能になっても望遠側が著しく暗くなるので使い勝手が悪かった。なのでプリミティブな二焦点レンズはコンパクトで、それなりに意義のある存在なのだ。実際、ズームレンズも広角側と望遠側の端っこしか使わないことも多い。
 本カメラの場合、基本は35mmF4の広角レンズで望遠側に切り替えると60mmF5.6になる。60mmというとちょっと半端な焦点距離に感じるけど、大抵の二焦点レンズはそんな物である。これを二倍の70mmにすると、レンズが暗くなるとか、不都合の方が顕著になるのだろう。気が利いているのは基本レンズが3群3枚のプリミティブな構成なのだ。チノンの三枚玉というだけで結果にゾクゾクするものである。望遠側は5群6枚になるので、テレコンの分だけレンズが増えるのであろう。プリミティブなのはレンズ構成だけでなく、ボディそのものも思い切った合理化を行っている。いや、簡素化と言った方が正確な表現だな。シャッター速度はなんと1/90の単速。せめて1/125にしてほしいところだが、レンズが明るくないので、この速度になったのだろう。AFは最短撮影距離が1.3mなのはイイとして、フォーカスステップが4段だという。一説には3段だという説もあるのだが、それだと最短と中間(5mくらい?)と無限遠しか選択できないということになるから、せめて4段だと信じたいな。絞りは広角側はF4、7.5、15、望遠側はF5.6、12、24の3段階である。なんだか中途半端な数字だが、望遠側のF24というのも凄いな。よっぽどのことが無い限りはそんなシチュエーションにはならないと思うのだが。なにせ、本カメラはDXコードに対応していないのはイイとして、マニアルでISO100とISO400しか設定できないのだ。チノンらしくフィルム室に電気接点のような物があるのだが、これが何のためにあるのかは分からない。ISO400でもF24を必要とする機会は滅多にないと思うのだが、何しろシャッター速度が1/90固定だから親切なチノンがそういう設計にしてくれたのかもしれないな。電源は単三電池2本を使用する。本カメラはフラッシュを搭載してモーター巻き上げだから電池は必須だ。いっそ、こんなスッカラカンなカメラなのだからマニアルで操作して電池不要にしてくれると面白いカメラになったと思う。勿論、そんなカメラは売れないだろうが。
 拙僧はそんな思い切ったカメラだとは知らなかったから、普通にアクロスをつめて撮影した。春の名古屋中古カメラ大バーゲンセール戦役の帰りにnico nico殿との共闘で動員したのだ。それが晴天だったか雲天だったかは覚えていないのだが、やっぱり大胆に露出コントロールを簡素化しているからなのか、アンダーなカットの多いネガになった。しかし、それが結構イイ感じなのである。そういうところがチノンの憎めない所である。カラーだとどういう風になるのか分からないのだが、ラチュードが救ってくれるのだろう。それならオーバーにしたプログラムの方が都合がよい気がするのだが、あえて(?)そうしないのがチノンの粋だ。
                        ☆             ☆
 チノンのプラカメは、わりかしエグいスタイリングのカメラが多いのだが、本カメラは比較的普通のカメラの顔をしている。しかし、中身は大胆に思い切った合理化をしたカメラなのが一興である。
 勿論、一興なのは数百円で買える現在であって、当時、新品で買った方はひっくり返るだろうな。決して高額では無かっただろうが、その頃は廉価なカメラだってひとまずAFカメラならそれなりにしたはずだ。
 今回はHオフに一杯喰わされたかなりのジャンク物件だったが、ひとまず撮影ができて良かった。こんな危ない物件に今や高価なモノクロフィルムを通す勇気を、ひとまずは褒めていただきたい。

   では、撮影結果をご覧頂きたい。

(了:2015/07/05)

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