キヤノン オートボーイWT28について


AutoboyWT28

☆ジャンク度☆
不具合無し
撮影可能


AutoboyWT28 AutoboyWT28
スライド式電源スイッチ。
ボディ上部のボタンでレンズの広角側と標準側を切り替える。

AutoboyWT28
ワールドタイムのデート付き。

AutoboyWT28 AutoboyWT28
リアコンバレーターで焦点距離を28mmと48mmに切り替える。


 本カメラの登場は1990年である。キヤノン初のAFコンパクトカメラであるオートボーイ(初代)の登場が1979年だから、既に20年以上が経っている。それだけ精錬化したかというと、そういう点もありそうでない点もある。本カメラは極めて特徴的な特性を持っているのだが、世間ではあまりポジティブに受け止められていないようで、取り扱うコンテンツは少ない。ジャンク市場でも多くはないが珍しい部類でもないので、そこそこ売れたのだろう。オートボーイ3のようなヒット作にはならなかったようだ。
 本カメラの強い特徴は28mmF4と48mmF6.5に切り替わる二焦点レンズの搭載である。この際、二焦点レンズなのは問題ではない。28mmのレンジを搭載していることだ。正確には分からないがコンパクトカメラで28mmのレンズ意を搭載したのは本カメラが初めてか最も初期であろう。当時、既にズームレンズ搭載のコンパクトカメラは存在し、そのパーフェクトな地位に君臨するオートボーイズームスーパーも登場していたが、レンズは39〜85mmF3.6〜7.3であった。本カメラが二焦点レンズを選択したのは、まだコンパクトカメラに28mmから始まるズームレンズを開発できなかったかコストがかかりすぎたのだろう。或いは大きくなりすぎたのかもしれない。なので、本カメラの望遠側(標準側)の48mmF6.5はおまけ程度で、肝心なのは当時はミニマムだったワイドレンズの28mmの搭載がパワーポイントだ。
 レンズの構成は28mmF4側は3群4枚、48mmF6.5は6群7枚になる。要するにベースは28mmで望遠切り替えボタンを押下するとベースレンズが繰り出し、脇に引っ込んでいたルーペみたいな枝付きのテレコンが重なるのだ。この種の二焦点レンズは焦点距離によってえらく描写が変わってしまう事が多いのだが、本カメラはあまり変わらないようだ。拙僧は撮影結果を見ても、どのカットが28mmでどのカットが48mmF6.5なのか分からない。しかし、ベースレンズやテレコンレンズはあまりパワフルとは言えない。テレコンを噛ませない28mmの状態でも極めて逆光に弱い。カラーフィルムで撮ると発色がそこそこいいので問題はないが、モノクロフィルムで撮ると結像は弱く諧調もはっきりしない。もっとも、この種のカメラは既にモノクロフィルムを想定していないだろう。だからそれでいいのだともいえる。逆光に弱いのは困るけど。
 ボディは当時としても薄らデカい方である。28mmの焦点距離と引き換えにしたら拙僧は納得するけど、当時の方はどうだろう。ちなみに、翌年の1991年には同じ28mm側の広角レンジを持つ二焦点レンズ搭載カメラがフジフィルムからカルディアトラベルミニとして登場する。この名機は本カメラに比べてぐっとスリムなボディを実現している。本カメラのネーミングに与えている「WT」は「ワールドトラベラー」を意味し、どうも当時は海外旅行などのクリティカルな撮影向けに28mmが必須・一押しと考えていたようだ。「ワールドトラベラー」の意味についてはもう一つあるのだが後述する。ボディはデカいが手に取るとアッサリ軽い。ペコペコとは言わないが、同じ樹脂ボディでも初期のオートボーイ(初代)やオートボーイ2に比べるとスカスカしている感は否めないな。それはそれで時代のコストダウンなのだろう。ちなみに、本カメラは台湾キヤノン製だ。レンズ蓋は薄っぺらい金属板で電源を入れるとスライドしてレンズが露わになる。このメカニズムには問題があって、ちょいちょい閉まらないか全く閉まらない個体がある。大したメカニズムとは思えないので、何かと安普請なのだろう。焦点距離の切り替え、レリーズ後のモーター音は大きい。祭りのような賑やかなシチュエーションでないとキャンデットフォトは難しいだろう。28mmが惜しくなるが、そもそも海外旅行の記念撮影用のカメラなのだ。セルフタイマーの横にカメラを片手でホールドしたようなアイコンのボタンがあるが、どうもパンフォーカスモードになるようだ。益々、キャンデットに使いたくなるが、これもカメラ慣れしていない方に自分の入った写真撮影をお願いする時に、パンフォーカスでそこそこ写っているようにする機能のようだ。この辺はキヤノンカメラミュージアムにも書いていないので正確ではない。
 「ワールドトラベラー」のもう一つの意味だが、本カメラは世界時計を内蔵している。なんでも世界24都市の時刻とサマータイムを計算・表示するそうだ。その為に世界地図をボディ背面一面に描いている。アラーム機能まで付いているから世界のどこでも飛行機の時間に間に合うことができる。1990年においてアラーム時計やモーニングコールの無いホテルに泊まるのは稀だろうが、新疆ウィグル自治区の招待場で寝起きする羽目にならないとは限らないな。それでも本カメラのアラームを世界の辺境で当てにした方は少ない気がする。
                    ☆               ☆
 兎角、キヤノンはコンパクトカメラに妙な機能を付属するケースが多かった。キヤノンばかりではないが、オートボーイシリーズは売れたからよく目立つ。1980年代初頭では稀だった海外旅行も1980年代後半では盛んになったのだろう。丁度、バブルで金もあまり円も高かった。そういう意味では確かに本カメラはバブリーである。
 28mmの広角レンズが嬉しくて、この信頼性のイマイチなカメラを拙僧は2台買ってしまった。それでカラーフィルムとモノクロフィルムを1本づつ通したが、再び使うことはないだろうな。
 バブルは遠くありである。

   では、撮影結果をご覧頂きたい。

(了:2016/4/1)

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