フジフィルム  ティアラズームについて


TIARAZOOM
梨地のアルミボディが自慢のティアラがズームレンズを搭載した。

☆ジャンク度☆
不具合無し
撮影可能


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倍率を押さえた28〜56mmの光学2倍ズームレンズが性能を引き出す。


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スライド式レンズカバーを開いて起動する。
一種のバリアブルボディになっている。


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スーパーEBCフジノンレンズとフィルム装填を容易にしたDILを主張するボディ。


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ズームレンズは望遠側でこれだけ繰り出す。


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1台目は完全にモノクロ液晶パネルが表示しなくなっていた。
2台目も完調とは言い難い。この辺りがアキレス腱なのだろうか。


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フィルム確認窓と光学ファインダーがフィルムカメラを主張する。


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ズーミングボタンに光るLEDがオシャレ。
電源はCR123A。

 フィルムカメラが全盛期の頃である。80年代後半からコンパクトカメラのズームレンズ化が進んだのだが、どちらかというとスペック優先でキヤノンのオートボーイジェットやオリンパスのIZMのような巨大化を招いていた。ブリッジカメラとも称するそれらは、もはやコンパクトでも何でもなかった。一方で、コニカビックミニやオリンパスμなど小型軽量の単焦点レンズ搭載機が見直され、脚光を浴びるようになった。このムーブメントがニコンのニコンミニAF600やコンタックスTプルーフにつながるの。リコーのR1はスタイリングを踏襲した高級機、GRシリーズを展開し大ヒットとなった。GRシリーズの冠は高級デジカメのシリーズとして継続している。丁度、同じ時期に高級コンパクトカメラというジャンルも花開いていた。
 単焦点レンズ搭載軽量機としてフジフィルムが送り出したのが、ティアラである。そもそも、フジフィルムにはカルディアトラベルミニシリーズが有った。これは一時期流行った二焦点レンズ搭載機で、広角側28mmのレンズに内蔵したテレコンをかまして45mmでも撮影できるのもだった。似たような方式はニコンのピカイチテレの他、コニカやリコーも出していたが、キヤノンが熱心でオートボーイテレオートボーイテレ6などユニークなカメラを送り出している。それらに比べて後発となるカルディアトラベルミニは、飛躍的にボディが小さくなっていた。この28mm側の描写はなかなかのもので、そのスリムで携帯しやすいボディも評価されてヒットした。45mm側は著しく画質が落ちるのだが、おまけとして割り切ればよい。シリーズ中には45mm側を省略した単焦点のモデルもある。単焦点レンズ搭載軽量機が安くてよく写れば充分だった時代は去り、ライバルが登場し始めるとだんだんスタイリッシュになってきた。そうなると、ぼちぼちカルディアトラベルミニのルックスは古臭いものになってしまった。そこで送り出したのがティアラである。ティアラが気張っていたのはクラス最小とアルミ系金属製外装のボディである。拙僧はティアラが現役時代を覚えているのだが、実売価格が2万円くらいでライバルのリコーR1sやコンタックスTプルーフと大差は無かった。R1sは24mm相当のパノラマ撮影、Tプルーフは何と言ってもT*テッサーと生活防水がプレミアムだった。その中でもティアラの金属製ボディは高級コンパクトカメラを少なからず意識していたとおもえる。もっとも、スタイリング的には美しいとは単純に言い難いんだけど、そこもフジフィルムらしくて好ましい。最小の方も、ちょっと厚みがあってコロッとしてリコーのオートハーフを髣髴しなくもない。先行したR1が目指した薄さと対比になっていて興味深い。その後にティアラのスタイリングはティアラズーム、ティアラ2と発展していくのでちゃんと売れたのだろう。ティアラのレンズはカルディアトラベルミニと基本的には同じものだと思っていたのだが、カルディアトラベルミニが3群3枚の28mmF3.5だったのに対し、同じ焦点距離で同じ明るさながらティアラは4群4枚のようである。
                 ☆           ☆
 本カメラはティアラのスタイリングを踏襲しながら、ボディを一回り大きくして光学2倍ズームレンズを搭載したものである。スーパーEBCフジノンの名を冠したレンズは28〜56mmF4.5〜7.5で、少々暗くなったが28mmの焦点距離に拘っている。明るさ(暗さ)は拙僧は開放では撮らないので気にならないな。レンジは高級コンパクトカメラであるコンタックスTVSと同じで、コンタックスTVSの方が若干明るい。奇しくもコンタックスがT*コーティングを誇った6群6枚のバリオゾナーに対し、本カメラはスーパーEBCを冠する2枚の非球面レンズを組み合わせた6群7枚のフジノンである。価格はコンタックスTVSが定価ベースで17万円なのに対し、本カメラは5万円である。コストパフォーマンスの高さは論を必要としない。実売は3万円前後だったようである。ということは単焦点のティアラに1万円を足すと暗いけどズームレンズが手に入るのだ。これはお得なのか?
 肝心のアルミ系金属製外装だが、あまり高級感は感じない。それでも、エッジはシャープで建付けも良いから、フジフィルムの実力を感じるな。フィルムの装填はフジフィルム伝統のドロップイン・ローディング(DIL)方式を採用している。平たく言うと半開きになった裏蓋のスリットに、フィルムのベロを差し込むようにしてパトローネを装填し、裏蓋を閉じると自動的にフィルムを巻き上げるギミックで、フィルムの装填ミスを軽減する。ごく一部の簡易カメラを除いて、プリワイディングと組み合わせている。つまりフィルムを一旦巻き取ってしまい、撮れたコマをパトローネに巻き込むシステムであり、不用意に裏蓋を開けても撮影済のフィルムは露光しないで済む。これは、そんなに馬鹿にしたルーフプルーフではなく、拙僧のように複数のカメラを使っていると、結構うっかりミスがあるので助かる。
 電源はスライド式のレンズカバーを開けることによって起動する。レンズの伸長は素早いのだが、本カメラの特徴である「デジタルプログラムストロボ」が足を引っ張る。実の所、この機能がどんなメリットがあるのか分からないのだが、兎に角、ナーバスにフラッシュを焚こうとするのだ。その為、快晴下でも起動時にフラッシュのチャージを行って、その間はレリーズが出来ないので、結果的に起動が遅くなる。と言っても、新世紀初頭のデジカメに比べれば我慢できなくもないのだが、そもそも勝手にフラッシュを焚くのは、拙僧のようなスナップシューターには著しく都合が悪いのだ。電源を切った時にフラッシュモードを覚えてくれれば問題ないのだが、そういう気の利いた事はしないのだ。フラッシュモードを発行禁止にするのだって「SHIFT」ボタンを押下しながら十字キーを3回も押さなければならない。これは結構面倒だ。デジカメみたいに待機で大量の電気を消耗する訳ではないので、電源を起動しっぱなしできなくもないのだが、そうそう続けて面白い被写体に恵まれるとは限らない。勿論、一定期間電源を入れっぱなしだと、自動的に切れてしまう。拙僧が最初に手に入れた個体は液晶パネルが不良で全く表示を放棄していたから、フラッシュモードの発行禁止方法が分からなくて苦労した。幸い、ネットで簡易マニアルを見つけたので盲目的にボタンをプッシュして、不安なまま撮影したのだ。2台目に手に入れた個体も表示はするものの、やや不安定で、この辺りが本カメラのアキレス腱になっているのかもな。
 本カメラが高級カメラを目指しているのは、なんとマニアルフォーカスモードを搭載しているのだ。と言ってもピント合わせを確認できる方法は無いのだが、目測で10ステップ以上の任意のフォーカスを設定することが可能なのだ。任意の絞りやシャッター速度を設定することは出来ないのだが、大体その場の明るさと設定した感度を検討すれば、ある程度まで絞るかそうでないかは想像できる。なのでフォーカスを3mに固定して乱れ打つことも可能である。しかし、拙僧から言わせるとオートフォーカスの正確さや迅速さに不満は無く、あまり意味があるとは思えない。ただ、本カメラは遠距離になるとフォーカスが甘くなるので、風景主体の方には無限遠モードは使い甲斐があるだろう。他に、鉄道や運動会で置きピンとも考えたが、そういう需要を本カメラで埋めるのは少々むりがある。肝心なバストショットやゴールシーンは望遠ズームを付けた一眼レフで撮影し、応援席でのスナップなどを本カメラで対応する使い分けが好ましい。
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 本カメラが高級コンパクトカメラの影を追った形跡は不快なものではないのだが、やはりフラッシュモードを忘れてしまうのは如何なものかと思う。高級コンパクトカメラというジャンルをフジフィルムは渇望していたらしく、後に高級コンパクトカメラよりは安いけど幸せ度も中くらいの煮え切らないセミ高級コンパクトカメラのクラッセを出している。これにはフジフィルムも未練があって、操作系の一部を変更したマイナーチェンジ版のクラッセS、伝統の38mmF2.8から28mmF2.8のワイドレンズを搭載したクラッセWと繋がり、なんと現在でも新品が入手可能である。フジフィルムの慈善事業の熱意には頭が下がるなあ。


 撮影結果(甥運動会編)もご覧頂きたい。

(了:2011/12/24)

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