キヤノン T−80について


T-80
キヤノン初のAF一眼レフカメラ。

☆ジャンク度☆
不具合無し
撮影可能


T-80 T-80
AF専用のレンズ、キヤノン AC 35〜70mmF3.5〜F4.5。
出っ張りの中にレンズ内モーターを格納する。

T-80 T-80
 設定はシーンモードのみで任意の露出は設定できない。
 パナソニック ルミックスDMC−FZ1と似たコンセプトである。

T-80 T-80
 ダサカッコいいガンダムチックなTシリーズデザインの最高峰(T−90は除く)。

T-80 T-80
 レンズはサーボAFモード付き。

T-80
 専用のAFレンズは標準ズームの他に望遠ズームもあったはずだ。

T-80 T-80
 基本的にはFDマウントを継承しているので、MFレンズも使える(筈)。


T-80
 連邦軍のモビルスーツとして立派に通用するリアビュー。

 キヤノンT80を褒めようと思う。本カメラは1985年に登場したキヤノン初のAF一眼レフカメラである。しかし、同年には伝説となっている画期的なAF一眼レフカメラであるミノルタのα7000が登場してしまった。本カメラのポテンシャルはハッキリ言ってα7000に比べれば惨敗だ。それはAFユニットの精度といったシンプルな要因ではなく、コンセプトそのものがコンシューマのニーズとアンマッチだったのである。しかし、そういう残念な視点から本カメラを見るコンテンツは他にいくらでもあるから、このページでは本カメラを温かい目で褒めてやりたい。
 実は拙僧は本カメラが結構好きである。そりゃAFの精度はダメな感じだが、同時期の京セラのAFシリーズだって大したものではないかった。ニコンのF501は、まだマシな方だったがミノルタがアッパレだったのである。勿論、拙僧が当時の人でレンズ付き定価128000円で本カメラを買ってしまったら、魔女の婆さんに頼んでキヤノンに呪いをかけるところだが、今は21世紀だ。本カメラを何時購入したのか覚えてもいないが自分で書いたブログによると2009年には手に入れているようだ。価格は分からないが2000〜3000円と言ったところだろう。本カメラのチャーミングな点は、そのプロトタイプ感であろう。よく、モータービーグルやカメラだと「研究室からそのまま登場したような」という表現はポジティブである。単車だったらガンマ250(パラ2)、最近だとスズキの軽自動車のパワーソースを搭載したロータス7ライクな四つ輪があるそうなのだが、男子はそういうのにトキメクのだ。カメラだと本当にプロトタイプのレスポンスだと困ったものなのだが。
 拙僧が好きな点はグリップ部のストラップスリットである。これがグリップの延長上にバーを上げ増しした感じでかっこいい。また、レンズ内モーターを格納したレンズ鏡頭のバルジも良い。まるでソビエトが場当たり的に改良した戦闘機かアーマードトルパー(byボトムズ)である。こういうスタイリングに男子は惚れるものだ。ファインダーを覗くとスプリットイメージが十字に切ってあり、ガンダムのガンサイトを思わせて関心深い。AFカメラなのにスプリットイメージに凝ってどうするとか、他に凝るところがあるだろうとか、そういうのが気になるならα7000かニコン F401を素直に買ったほうがいい。また、よく言われるのは基本的には本カメラはオートカメラで任意に露出を設定することができない。可能なのはプログラムAEモードと4つのシーンモードの選択である。シーンモードはアイコンで表示し「三人の人=被写界震度を深く」「走る人=シャッター速度を早く(スポーツ撮影)」「手前の人と白抜きの二人の人=絞りを開けて(ポートレイト撮影)」「背景に横線の走る人=シャッター速度を遅く(流し撮り)」を割り当てている。流し撮りモードは限定的(1/15〜1/125)ながらシャッター速度を設定できるのだが、基本的にはシーンモードのみのオートカメラである。この辺りが本カメラの評判を著しく悪くしている。しかし、拙僧はシーンモードは殆ど使わないが、大抵の場合はプログラムAEで済ましてしまう。露出値を表示しないのも評判が悪いが、拙僧はプログラムAEで撮影したいテンションの時に露出値なんて対してみないしな。
 「アートロボ」というのが本カメラのペットネームなのだが、本カメラは当時のキヤノンの中級機であるT70の発展型というよりは、1ラインのプログラムAEしか搭載しない廉価機の「オートマン」T50にAFユニットとプログラムAE+シーンモードを追加させたものだと思われる。当時のキヤノンはAF機構に対して緩く評価しており、AFも使えてプログラムAE+シーンモードでユーザーが気軽に使えるというのが本カメラのコンセプトだったのだろう。AF機構を欲しがるのは所詮初心者だけと高をくくって大失敗したのがオリンパスのOM707だが、あそこまでの失敗作というかユーザーを舐めてはいないと思う。
                 ☆           ☆
 一応、FDマウントの延長上にあるACマウントなのでFDマウントも絞りを「A」にすればプログラムAE+シーンモード機として使える(筈)。拙僧は試したことはない。何でもFLレンズをつけると実絞りで使えるそうだ。これはT70から踏襲しており、何故かマニアックな要素を残している。
 本カメラは、そのプロトタイプをそのまま登場させたAFユニットの精度の悪さが強調されるが、本来は露出を攻めるようなシリアスカメラではない。しかし、ユーザーの精度に対する目は厳しかった。そりゃ定価ベースで128000円も出したら腹も立つだろう。
 AFは専用のACレンズしか対応しておらず、標準ズームと望遠ズームと50mmF1.8の3本だけを用意したようだ。50mmF1.8はまだ見かけたことはない。この大失敗でキヤノンはFDマウントから決別し、現在にも継承するEOSシリーズを投入し、大国ニコン帝国を脅かす存在になっているが、それは別の話である。
 キヤノンはキヤノネックスやEX−EE/AUTOなど実験的なカメラをしばしば投入した。ペリリクスだって思い切ったカメラだっただろう。しかし、現在のように株主に対する説明責任の重圧の世の中では、思い切った実験的なカメラの投入は難しいだろう。実験的なモデルがEOS−Mでは、やっぱり寂しい。

 
 撮影結果(三河桜祭り編)もご覧頂きたい。

(了:2015/2/11)

カメラメニューへ戻る
「意してプラカメ拾う者なし」へ戻る

inserted by FC2 system