ペンタックス MEについて


ME
以前、不完全な個体を2000円で拾ったが、完全に見える個体を後に確保。

☆ジャンク度?☆
露出計不安定?
モルト不良
撮影可能


ME ME
 オーソドックスを絵に描いたようなボディ。

ME ME
 巻き上げレバー等、操作に重要なパーツは充分な大きさである。

ME
 誇らしい「ASAHI」の刻印。

ME ME
 レンズ脱着ボタンの位置がKマウントのアイデンティティ。

ME ME
 タムロンの定番標準ズーム「35〜70mmF3.5」がKマウントリング付きで転がっていた。
 500円は安い。

 1980年代にオートロンを出すまで、ペンタックスは一眼レフの専業メーカーだった。そのラインナップは110判のオート110から中判のペンタックス6x7まで広がっているのだから大した物である。ペンタックスの前身である旭光学は戦後の復興期から一眼レフに活路を見出していた。1952年、初めて発売したアサヒフレックスは日本発のライカ判一眼レフカメラであった。クイックリターンでなく、マニアル絞りでペンタプリズムの無いウェストレベルファインダーだったが、速やかにクイックリターンの実用化に成功する。世界初のクイックリターンの実用化はハンガリーのデュフレックスに譲るようだが、それは旭光学の技術力になんら遜色を与える物ではない。その後、ファインダーにペンタプリズムを使用し、マウントをプラクチカ互換のいわゆるM42というスクリュー(ネジ)マウントに変更したペンタックスを送り出し。その後、Sシリーズで半自動/自動絞りの実用化に成功する。そして、それはTTL露出計内蔵のペンタックスSPに成功に繋がるのだ。人生の一眼レフデビューがFEの拙僧にはイマイチぴんと来ないのだが、SPは小型軽量ボディとしても市場に浸透したようだ。ニコンF2フォトミックが最安値二千円で転がっている現在と違って、当時はニコンやトプコンというのはアマチュアが簡単に手が届く代物ではなかったようである。国民機として名高く、雑誌の投稿率はきわめて高かったようである。
 M42スクリューマウントというのは工作精度もおおらかで構わず、オープン規格として様々なブランドのレンズが現在も楽しめる。しかし、開放測光や自動絞りといったレンズとボディの連動機構が必要になると、レンズの装着完了位置が厳密でないスクリューマウントには限界が生じることになった。そこでレンズの脱着も素早いバヨネットマウントのKマウントが登場となる。1975年と言えば時代は既にバヨネットマウントだったから他社から後塵を浴びていたことになるが、それだけペンタックスのスクリューマウントを支持する層が厚かったと言うことになる。
 K2を頂点とするKシリーズはペンタックスの思惑通りには受け入れられなかったようだ。よく言えば保守的だったが、既に1972年には小型軽量で気を吐いていたオリンパスOM−1が登場している。Kというのはキング(King)から                  ☆           ☆
 現在の目線で見ればこそ、MXと言うカメラは良くぞここまでと思えるコンパクトなボディに信頼性の高い機械式シャッターを搭載した燻し銀の魅力を持つカメラであるが、登場時には絞りさえ決めれば露出はオートで撮影してくれるMEの方が販売価格は高かったそうだ。これも時代によって価値観が変わる例だけれども、本コンテンツでは主役はあくまでもMEなのでMXの話は何れの機会に譲りたい。そこでMEなのだけれども、前述のようにペンタックスはMシリーズを高級路線から外し、普及機と位置づけられた。勿論、現在の目から見れば真鍮をベースにしたトップカバーなど奢られたものだが、当時としては絞り優先AEのみに機能を絞った一眼レフと言うのは画期的な機能のスリム化であったらしい。ちゃんとした検証が出来ていないのだけれども、後に続くオリンパスOM10やニコンEMに先立つ本カメラは、絞り優先AEのみ一眼レフカメラの草分けと言えるのではないかと思う。これは操作の簡易化とボディのスリム化に対するペンタックスの執念を感じざるを得ないな。オリンパスOM−1はその後にOM−10と言う普及機の登場によってフラッグシップとしての位置を維持しなければならなかったのに対し、ペンタックスのMシリーズはLXの登場で中級機から普及機の位置に準じ、MV−1などそのように進展していく事は複雑な思いを隠せない。
 それは兎も角、本カメラを使ってみよう。本カメラにはシャッターダイヤルと言う物が無い。あるのはロック、AUTO(AE)、100x、Bの切り替えスイッチだけだ。拙僧の固体はその切り替えスイッチさえも欠落しているのでカメラとして機能するのかも心配になってしまうが、幸いな事にAUTOで固定されているので普通に撮影できる。これも人徳だな。機械式シャッターと電子式シャッターのペアというとニコン者の拙僧はFMとFEを想像してしまうけど、マニアル撮影もできるFEに比べ前述の通り本カメラは絞り優先AEのみとなっている。ニコンの絞り優先AEの一眼レフと言えばEMになるが、EMの方が5年程後に登場しただけあって洗練されている。あまりフェアとは言えないかもしれないが、ここでは本カメラとEMを比べてみよう。
 寸詰まりでコンパクトに見えるEMだけれども、流石に本カメラの方が小さい。外装で大きな違いは本カメラが真鍮を使っているのに対し、EMは完全にプラスチックである。身びいきかもしれないが、EMが安っぽく見えないのは本カメラが登場した時とEMが登場した時では工業プラスチックの技術の向上があったのであろう。本カメラのスイッチはロックとAUTOと機械式シャッターの1/100とバルブである。EMはロック(電源OFF)という概念は無く、AUTOと機械式シャッターの1/90とバルブの切り替えスイッチを搭載する。双方とも1速ながら機械式シャッターを搭載していることだ。これは本来、フラッシュ撮影などに使うものなのだろうが、電池が無くても何とか対応できる。もっとも、本カメラは電池が無くても1/100でシャッターが切れているようだ。EMの場合はミラーアップしてしまう。これは、電池が無くなってしまった事が明確に分かるかどうかでと言う点で一長一短あると思う。
 ファインダーを覗くと、本カメラの露出計は赤いダイオードで速度を示すのに対し、EMでは伝統的な追針式になっている。情緒的には追針式の方が雰囲気はいいが。薄暗いところではダイオードの方が見やすいかもしれない。特徴的なのはEMが常識的な1〜1/1000までのシャッタースピードなのに対し、本カメラは最長8秒から1/1000とスロー側に強いことだ。これは電子シャッターの長所を取り込んだものだと思われるがニコンだとFEが8秒を搭載していた事を考えると興味深い。やはり、本カメラはニコンのFEにマニアル撮影を除いた立ち位置のカメラなのだろうか?露出補正ダイヤルやシンクロ接点の省略などEMの方がより割り切っている。マット面はどちらが優れていると言うほど違いは無いが、拙僧の場合は使い慣れたEMの方がフォーカシングはしやすかった。これは慣れの問題だろう。AEロックが無いのが唯一の不便だけれども、まあ、目くじらを立てるほどではないかな。
                 ☆           ☆
 本カメラは、その小型軽量のコンセプトが受けて随分売れたようだ。ただ、同時期のライバルのキヤノンAE−1の牙城を崩すまでには至らなかったようだ。AE−1のコンセプトと言うのも強く市場に受け入れられたのであろう。
 尚、本カメラのペンタ部には「ASAHI」の文字が彫り込まれ光っている。

 
 ペンタックスM50mmF1.4による撮影結果もご覧頂きたい。


(了:2013/10/29)

カメラメニューへ戻る
「意してプラカメ拾う者なし」へ戻る

inserted by FC2 system