フジフィルム クラッセ



KLASSE
遅れた高級コンパクトカメラ

☆ジャンク度☆
無し
撮影可能


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 スーパーEBCフジノン38mmF2.6が光を放つ。
 MFモードダイヤルはモデルチェンジで露出補正に変わってしまった。


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 勿論、絞り優先AEを搭載。
 高級コンパクトカメラの代名詞である。

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 「プロフェッショナル」という冠詞は既にステイタスではないと思うのだが。

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 どういう訳だが、この個体はフィルム裏蓋が異様に傷が多い。
 フロントパネルは綺麗なのに謎だ。

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 無論、ちゃんとした光学ファインダーを搭載する。

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 鏡筒内は意外と工夫が無い。
 この辺りはコンタックスT2あたりの演出を学んでほしいな。

 マリリン=モンローが北米の何かしらの大統領(有名な人物だろう)の誕生日会に遅れて到着した映像を見たことがある。「遅れた(late)モンロー」と紹介されたモンローがゆっくりとハッピーバースデーを謳っていた。本カメラはそういう雰囲気があるカメラだな。モンローが美人女性とはちょっと違うジャンルだという意味を含めて。
 本カメラが登場したのは2001年である。21世紀の始まりだが、フィルムカメラは終わり始めていた。90年代に高級コンパクトカメラが流行した。拙僧は原体験としては知らないのだが、コンタックスT2が火付け役となったとされる。リコーからはGRシリーズが登場し、GRデジタルの源流となっている。ミノルタのTC−1は、他の高級コンパクトカメラが値崩れしている現在でも、かなり高額を維持しているのが立派だ。ちょっと路線は違うかもしれないけど、コニカのヘキサーもムーブメントの一つに加えてイイだろう。ニコンですら35Tiや28Tiを出しているし、ライカもズマリット40mmF2.4を搭載したミニルクスを出している。ライカも遅い方だったが、本カメラも高級コンパクトカメラとしては遅咲きだ。
 そもそも、本カメラを高級コンパクトカメラに含めてイイ物か、セラーによっても評価が分かれたようだ。プロパー価格で7.7万円はコンタックスT2やミノルタTC−1の10万円越えに比べると割安に感じる。2014年の現在であれば約8万円の価格はカメラへの投資価格としては高い。普及クラスのレンズキットの一眼レフデジカメだって、もうちょっと安いかもしれないな。しかし、時代は2001年の頃である。「買える」一眼レフデジカメの主流が600万画素級で、しかも20万円以上した。なので、肝心のヌードモデル撮影会をパワーショットG2で凌ぐ方もいらっしゃったのだ。それもEOSと同じアクセサリーが使えるからという理由なのだったが、実際にはかなり嘘だったようだ。APSサイズの撮像素子を搭載した一眼レフデジカメに慣れるために、FマウントやEFマウントのAPS判一眼レフ(フィルム)を、わざわざ中古で買って練習する方もいた。当時はコンパクトフラッシュだってべらぼうに高かったのだ。なのでフィルムメーカーのフジフィルムは、フィルムカメラでもう一押ししようとしたのかもしれないな。フジフィルムも民生フィルム市場なんてのは急速に先細ることは分かっていた。だから、メディカル/コスメのジャンルで強固な地盤を築いたのだが、そこは企業としても責任意識があって、フィルム文化を完全に絶つのは忍びなかったのだろう。なので、売れ行きは細くてもフィルムを消費するフィルムカメラの標準軸を維持するつもりで本カメラを設計したのかもしれないな。
                ☆           ☆
 ボディは軽金属系だと思われるのだが、あまり高級感を感じない。拙僧の個体も2000円くらいで拾ったのだが、フロントボディは綺麗だが裏蓋はかなり傷がついて汚れている。もしかしたら、裏蓋は材質が違うのかなあ。軽自動車を整備しようとしたら、外から見えない部分の防錆処理が全くイイ加減なのを発見した気分である。本カメラの「クラッセ」の語源は「エリート」を意味するドイツ語らしいのだが、現在ではフィルムカメラ(や、その愛用者)の代名詞である「クラシカル」に近い。本カメラの評価がイマイチなのは、ルックスにも責任がある。フジフィルムのカメラというのは伝統的にルックスがイマイチなのだ。本カメラの鏡筒を囲むフグの口のようなモールドは、DL−100とかワークレコードとかエピオンRVXとかで確認できる。しかし、ハッキリ言ってカッコ悪いな。DL−100のデザイナーが2001年登場の本カメラを直接デザインしているとは思えないので、フジフィルムの企業文化の中では高評価なのだろう。そういう意味では後裔のナチュラの方が保守的だが親和性の高いスマートなルックスだ。特にいただけないのはボディ上部の「Professional」の文言だ。今どき、プロだから偉いとか、プロだから憧れるなんてないと思うのだが。勿論、今でも名古屋の地方局のロケで使うハンドカメラはTVフジノンを搭載し、立派にプロに耐えるクオリティを発揮している。カメラで撮影したい欲求はまるで別だと思うな。むしろ、汗臭いプロなんかと一緒にしてほしくない。優雅にモノクロフィルムを通したいものだ。
                ☆           ☆
 レンズはテッサータイプの38mmF2.6である。F2.6という半端なF値がフジフィルムらしい。かつての一眼レフ用のフジノン50mmF2.2あたりを思い浮かべるな。メジャーな焦点距離としては35mmが一眼レフカメラやライカ系距離計連動機と組み合わせて「準標準(広角)」レンズとして知られている。しかし、38mmはフジカコンパクト35とかフジカGERとか、伝統のある焦点距離である。フジフィルム程の膨大な技術的ノウハウのあるメーカーならば、35mmのテッサータイプのレンズを設計するのなんて左手仕事だし、F2.8と比べて若干明るいから市場の評価が上がったり下がったりするような小さなブランドではないと思うのだが、ちょっと小手先で誤魔化しちゃうところがフジフィルムにはあるのだ。そういう傾向はデジカメ時代も継承して、ファインピクス4700Zの水増し問題が発生しちゃう。そのまま、真っ直ぐに送り出せば本来の評価を十分得られるはずなのに、損をしてしまうのだ。最近の流行の言葉で「本当は出来るんだけど、今はやらないだけ。」というのがあるらしいのだが、フジフィルムの場合は「本当に出来るのに、どういう訳か余計なことをする。」だな。ちなみに後裔機のクラシカSでは38mmF2.8に変更になるのだが、本当に設計は違うのだろうか。
 カタログスペックはちょっと疑りたくもなる。しかし、本カメラのフジノン38mmF2.6の写りは素晴らしい。拙僧はピーカンで撮影したオーバー気味のモノクロを更に現像で押す「パリパリ」のネガが好きなので、最近は横着をして雨や曇りの日はデジカメに任せたりする。しかし、本カメラに通したプレスト400は、悪天候や限定的な光源下の被写体も素晴らしい諧調を表現する。拙僧は芸術家の真似はプロの真似ほど嫌いだが、アーチスティックという表現しか頭に浮かばないな。コンタックスT2の「シャドウの中の闇」を映し出すゾナー38mmF2.8もイイが、本カメラの悪条件を忘れさせるキレも素晴らしいものだ。名古屋のカメラ屋で主催したモデル撮影会で元フジフィルムのエンジニアの方にお会いしたことがあるのだが、本カメラのレンズを絶賛していた。どのようなポジションで仕事をなさっていたのかは聞かなかったが、フジフィルムとしても力の入ったレンズのようだ。
                ★           ★
 本カメラの投入の後、フジフィルムからはISO1600での自然光撮影に特化たナチュラと、本カメラをベースとして28mmの広角レンズを組み合わせたクラッセWを投入している。本カメラの直接的な後裔機はクラッセSである。本カメラとクラッセSの明確な違いは、フロントパネルに配置したダイヤルである。本カメラではAF/MFの切り替えとフォーカス設定に使っていたが、クラッセSでは露出補正を割り当てている。拙僧などはF8に絞ってフォーカスは3〜5mに固定なので、露出補正など要らないなと思ったが、ポジの方には必要らしい。本カメラのAFが外れたことはほんの僅かしかないから、十分なAFユニットを登載すればMFモードは不要なのだろう。いや、拙僧はクラッセSを実際に手に取ったことが無いから、MFモードも違う形で搭載しているかもしれないな。
 既に、新品のフィルムカメラの入手は困難である。フジフィルムからも現行品はクラッセWのブラック仕様のみとなった。
 感材もかなり値が上がりつつあるが、シングル8の時のように、フジフィルムには慈善事業としてフィルム・感材の供給を続けてほしいな。

 では、撮影結果(モデル撮影会編)を見て頂きたい。

(了:2014/1/5)

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