フェニックス(鳳凰) DC303Kについて 分解編


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破壊した巻き上げレバー軸には革を貼った。

 気になるのはFX−3とFX−3Superの違いとFX−3SuperとDC303の違いだ。FX−3とFX−3Superの違いはグリップの有無など外装面の違いしか分からなかった。FX−3SuperとDC303の違いだが、手持ちのFX−3と本カメラを比べてみると、明らかに違うのがクオリティの違いである。拙僧の個体はそれ程使い込んだ物とは思えなかったが、レンズマウントの建てつけも悪く、貼り革の貼りはいい加減で所々はがれていた。これは海鴎等の例を出すまでも無く中国国内ものの標準的な傾向だ。
 外観では大した違いは確認できなかったので「ジャンクカメラの分解と組み立てにもっと挑戦」のFX−3の項を参考に分解を始める。勿論、例によって修理に至る自信は無いが、ちょっとしたタイミングで直ってしまえば見付けものである。


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 巻き戻しクランクを外す。

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 文献によれば巻き戻しレバーは軸の貼り革を外すようになっていたが上手くいかない。

 文献によれば巻き上げレバーは軸の貼り革を剥がしてネジを露出させると記述があったが、マイナスレバーでほじっても現れない、結局、巻き上げレバーのヘッドをボロボロにした後に、レバーが金属製の本体と樹脂製のカバーで構成されていることがわかった。FX−3を確認しても、こちらは樹脂の一体形であるから、強度的な問題でFX−3Superは変更になったのかもしれないな。

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 巻き上げレバーは樹脂部のカバーと金属製の本体に分かれていることが分かる。
 ボロボロになった樹脂性カバー。

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 巻き上げレバーを分解。逆ねじに注意。

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 シャッターダイヤルを外す。
 シャッターオープナーが欲しいところだが。

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 軍幹部を外すとファインダー枠とレリーズボタンが外れる。

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 ホットシューとシャッターダイヤルの配線とポジションを記録。

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 裏蓋を外す。

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 切り欠きのあるカムに二重防止ストッパーがはまっていることで巻上げが出来ないようである。
 レリーズボタンの押下で二重防止ストッパーが待避する筈だと思うのだが。

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 ミラーボックスを外すため、貼り革を剥がす。

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 レンズボードを外すため、マウント部を分解。

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 レンズ脱着ピンのバネに注目。

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 レリーズ用ビームを更に分解し、シャッターチャージ部を確認する。

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 レンズボード、軍幹部基盤を外す。

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 ミラーボックスを外し、ボディ基部の電線を半田コテで外す。

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 青円がシャッターチャージビーム、赤円が二重防止ストッパー。

 ここまで分解するとシャッターチャージからレリーズテコ、ミラーアップとシャッター開放までの一連のリンクが分かる。まず、本カメラの巻き上げの問題については、巻き上げカムに二重防止ストッパーが噛んでいることで行えないことがわかった。本来なら、レリーズボタンの押下と、それに伴うレリーズテコと二重ボタン防止ストッパーの待避で巻き上げが可能になるはずなのだ。という事は、レリーズボタン押下後のリンケージにも問題がある。
 ミラーボックスを外すと、ボディ側では巻き上げレバーに連想してシャッター幕がチャージされていることが分かった。ミラーボックス側も下部に当たるチャージレバーでクイックリターンミラーがチャージされ、開放レバーでミラーが上下されることが分かった。このボディ側とミラーボックス側のリンクは底で行われ、双方が上手くかみ合わせれば正常に動くようである。
 バラバラだとちゃんと動くのだが組み立てると相変わらずレリーズボタンは不動である。そこで正常なFX−3の底蓋を外し、リンケージを確認した。


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FX−3の底板を外し、巻き上げ・レリーズの構造を知る。

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本カメラのビームやテコをFX−3のレリーズ後の位置に調整する。

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この突起にレリーズテコの爪が引っかかっていないところがレリーズ後のリンクに問題を起こすようだ。

 ミラーボックスを何度も組んだのだがレリーズボタンが無反応だったり、巻き上げレバーで巻き上げた途端にシャッターが切れたりと中々上手くいかなかった。一度は上手くいき、ミラーボックスを組んで再確認したら駄目というのもしばしばである。そこでよくよく観察するとレリーズ後に移動するボディ下部の突起部がレリーズテコの爪に上手くかみ合っていないことが分かった。レリーズ開放(巻き上げ可能状態)の位置にビームやテコを固定し、動かないように未チャージ状態のミラーボックスを組み上げると上手くいくようだ。ここを気をつけないと、組み上げ時にレリーズテコが正常では無い位置にずれ、巻き上げストッパーが掛かってしまうのである。
 これに気づくのに随分と長い時間を必要とし、また、散々カメラを弄繰り回したので多くの電線が外れてしまった。これは不用意に外れてしまったため記録も残らず配線が分からなくなってしまった。また、これまた不用意に絞り連動レバーを触ったら壊れてしまい、あわててマウント部を分解するが、これは根元から破壊してしまったので取り返しがつかなくなってしまった。幸い機械式シャッター機なのでマニアル露出なら使えるはずである。



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あちこちで配線を切る。
もう、手の施しようが無い。

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露出計連動機構を根元から破壊してしまった。
このままだと連動爪が不用意に動いてレンズの脱着にも影響があるので爪を折ってしまう。

 作業中に断線し配線も記録していないなど言語道断だろう。オマケに露出計連動機構を根元から破壊してしまったので露出計は完全に使えなくなってしまった。これは修理ではなく破壊である。それでもバルブは怪しいものの他のスピードは切れ、自動絞りも問題ないようなので拙僧のやっつけ仕事の割には何とかなった方だと思う。少なくても送料込1850円のお買い物がまるでパーにならなかっただかでも嬉しい。今後、フレキ基盤を使うようなカメラも分解したいがまだ先だろう。
 FX−3と本カメラの違いは巻き上げレバーの他に、FX−3が内部機構でプラスネジを使っている場所で本カメラはマイナスネジを使っている場合が複数有った。これはFX−3とFX−3Superの違いとも思えないのでフェニックスによる変更だろう。もっとも、個体差もあるかもしれない。何れにしろ建て付けはヤシカには相当劣るが、これは品質管理のボーダーラインの差に因を発するのだろう。実感としてあらゆる工業製品に言えることだが、日本で購入するメイド・イン・チャイナは信用できるが中国国内で流通するメイド・イン・チャイナは問題を抱えている場合が多い。いかに日本のメーカーや商社が苦労していることが垣間見える。


   では、撮影結果をお待ち頂きたい。


(了:2010/1/11)
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