京セラ コンタックスT2


ContaxT2
元祖高級コンパクトカメラ

☆ジャンク度☆
無し
撮影可能


ContaxT2 ContaxT2
 シンプルな外観が高級感を持たせる。

ContaxT2 ContaxT2
 お好きな方には堪らないTスターレンズ。
 ブランドも立派なゾナー38mmF2.8である。

ContaxT2 ContaxT2
 鏡筒で絞りを設定するのは何気に嬉しいギミックだ。
 お金が掛かったと思われる虹彩絞り。

ContaxT2 ContaxT2
 目測だがマニアルフォーカス可。
 露出補正の幅の広さもコンパクトカメラとしては異例。

ContaxT2
 眩しいコンタックスブランド。

ContaxT2
 シンプルな背面は凛々しい。

ContaxT2
 植毛された鏡筒内。お金が掛かっている

 拙僧が東京時代、コンタックス党の親父と交流があった。気さくな親父で素人撮影会なども主催するので仲良くしていたのだが、某教団の信者と言うことが判明したため距離を置くことになった。この教団をコンテンツで語ることは「ぶっちゃけ家は中共です」と宣言するより遙かにデンジャラスなので触れることは出来ない。そういう訳でそのコンタックス親父とは疎遠になり、そうこうするうちにカナダへ移住するのだが、そのコンタックス親父が薦めたのがコンタックスG1とアリア、それに本カメラであった。
 高級コンパクトカメラという分野は拙僧も知っていた。拙僧がニコンEMブロニカS2で元気にその辺のねーちゃんを撮影していた頃に10万円以上もするコンパクトカメラというのは最早興味の対象にもならなかった。いや、実際にはライカやニコンF5も含めてライカ判しか撮れないカメラにそのような高額な投資をするのは理解が出来なかった。ニフティフォーラムも盛んな次期に、15万円以上もするミノルタTC−1を大事にする方と同席になって、「自分ならカメラはEMにコシナの20mmF3.8で沢山なので、そんな金が有ったらベトナム行きのチケットに持てるだけのネオパンFを買いますね。」などと粋がったのも懐かしい。
 いや、興味の対象にならなかったと言うのは購入は不可能である現実問題に対する方便である。ゾナーコピーと言われるユピチェリ9でいい思いをしていたからゾナー38mmF2.8には興味があった。勿論、ユピチェリ9は85mmF2であり、ゾナーと言うと標準から中望遠のブランドなのではないかと言う思いもあり、また、それが日本製の何某である事は浅はかな拙僧でも理解していたが、時計や車のブランドには拘らない拙僧もレンズのブランドには心が揺れるのである。なんと言ってもツアイスである。これはソニーからツアイスブランドのデジカメが乱出する前の話である。勿論、今でもツアイスと言えばフィルムカメラのレンズに限ると言う思いは変わらない。
 それで「5万円を超えるお金をライカ判カメラに消費するのはちょっとね」などと嘘ぶっているうちにデジカメの世になってしまう。京セラは苦戦しながらもファインカムSL300Rのような薄型のスバイル型デジカメなどのユニークなカメラを出していたが、2005年辺りでカメラ事業からは撤退した。コンタックスブランドのデジカメも出していたようだが、その実はファインカムと変わらなかったりして、デジカメでカメラ人生を始めるような層にはイマイチ響かなかったようである。最早、ツアイスというブランドは高価とは言えないクラスのデジカメにも搭載するようになったし、コシナからはツアイス・イコンの名にもつライカMマウントの距離計連動機が登場している。ツアイスやコンタックスというブランドは前大戦後の東西分割しかり、どこか不遇な運命を背負っているようにも見られ、判官贔屓な日本人には好まれているのかもしれないな。
 そうは言え、漠然とコンタックスブランドのカメラは欲しいと思っていた。狙うのは中判のイコンタだったりしたが、当然それなりの価格帯になってしまうので入手には至らない。このままではフィルム環境が消滅するのが早いかと心を痛めていたが、2009年の末に行きつけのキタムラの中古コーナーに本カメラが展示されているのを確認する。価格は1万円ちょっと。往年の価格帯からすれば気の毒なほどの没落振りだが、今更フィルムコンパクトカメラに投資するには躊躇する価格である。しかし、気が付いたのは本カメラはコンパクトカメラではなく高級コンパクトカメラなのだ。実際、周辺のキタムラにはTC−1が4万円台で転がっていたし、以前もニコン35Tiが5万円台で頑張っていた。そう考えるとゾナーやらT*(スター)やらのブランドを手に入れる機会も今後少ないと思い入手に至る。決め手は半年の保障が付いていたのだ。本カメラは他の京セラのカメラと等しく、信頼性にイマイチと噂は聞いていたので安心に至った。キタムラの店員には「これはデジカメじゃ有りませんよ」と念を押されたのも、本カメラの現在の市場価値を現しているだろう。
                ☆           ☆
 発売は1990年と言うから今から20年も前だ。ニコンはF601、オリンパスはL1だから、意外と年配である。前述の通り、10万円台の単焦点のAFコンパクトカメラは拙僧には不思議だったが、高級コンパクトカメラというジャンルのパイオニアは本カメラであるらしい。T2と言うからにはT1が存在するのかと思ったが、「コンタックスT」という長兄が存在する。これはAF時代に突如現れた距離計連動機であった。そのレンズには定評があったようだが、やはり一般受けはせず埋没したようである。AFコンパクトカメラの難点はレリーズ時に何処にピントが有ったかが正確には確認できない点に有り、拙僧もビューファインダーカメラでは怖くて重要な撮影はできなかった事もあった。何しろ20年も前のカメラだからAFユニットの成熟度もそれなりで、いっそのことマニアルフォーカスでやらしてくれと言うニーズはあっただろう。しかし、そう言ったニッチな市場はコンタックスブランドを敬愛する層には訴える物があったと思われるのだが、商売的には成功しなかったのであろう。コンタックスTは現在、そういうニッチな方々にプレミアが付いているようである。
 コンタックスTが搭載していたゾナー38mmF2.8は定評があり、これのAF化は正常進化と言えるだろう。精度の高い距離計とAFユニットのどちらがコスト安などという事は問題にもならない。拙僧個人としては、確かにマニアルフォーカスでこそ実感できる撮影は有ると思うが、もっと手軽にゾナーを使いたい欲求も正常であると考える。マニアルでじっくり撮影したい方のためにゾナーは他にも幾らでもある。ただ、あさっての方向にピントが合うくらいなら目測で絞って撮影した方が素早くてよいという考えを反映し、絞り優先AEとAFの他にマニアルフォーカスポジションを搭載した。これがコンパクトカメラとして画期的なアイデアだったのかどうかは分からないが、少なくても本カメラに続く高級コンパクトカメラの基本になったのは確かのようである。拙僧は目測撮影は苦手なのでマニアルフォーカスを利用する場面は少ないと思うが、絞り優先AEを搭載していなかったら、どれだけレンズの評判が良くても本カメラを手に取らなかったであろう。
 但し、この絞り優先AEには制約がある。鏡筒にはフラッシュモードの他にF2.8からF16までの絞り値が刻まれている。このうちF2.8だけが緑色で表示されており、初めはどういう意味なのか分からなかったが、F2.8のポジションの時にプログラムAEになるのである。これには開放で撮ってこそゾナーと思っていたので失望したが、そもそも本カメラは絞り優先AE時にはシャッターの最速が1/200らしい。らしいと言うのはそういうコンテンツを見つけたのだが、ファインダー内に表示するシャッタースピードは1/125の上は1/500なのだ。実際、照度の高い場所で絞りを開くと1/500の表示が点滅する。これが、1/500よりオーバーなのか、本当は1/200よりオーバーを意味しているのかは分からない。この辺の不親切さは如何にも京セラである。拙僧の感覚で言うと最も絞った状態がプログラムAEになる方が自然だと思うのだが、シャッターの最速が1/200ならば今やISO100未満のフィルムの調達が困難な現在では開放での撮影は限定的となるであろう。絞りをF2.8の状態でファインダーを覗くとシャッタースピードの他に「P」の表示が確認できる。この「P」の表示が現れている場合プログラムAEとなる。暗い場所で「P」の表示が現れない場合は開放で撮影となるようだ。
 本カメラの露光機構は複雑である。それはプログラムAEの場合と絞り優先AEの場合では露光の手順が異なるのだ。鏡筒の絞りリングを回すとレンズ内には7枚羽根の虹彩絞りが現れ、シャッター速度が変化し絞り優先AEを実現する。こういうのは如何にも写真機のレンズで撮影していると悦になるのだが、プログラムAEの場合には3枚のビハインドシャッターが絞りを兼ねるのだ。これでは普及機のコンパクトカメラ並みである。なんだか「プログラムAEで撮影する場合には3枚羽根で充分」と言われているようで複雑な思いだ。実際にはさして作画に影響を及ぼすほどの物ではないとも思うが、高級コンパクトカメラで撮影している充実感というのは絞り羽根の枚数とか、そういうところに傾倒するのだ。勿論、実際に拙僧が適切な価格帯で購入したかどうかは別問題である。
 プアだといわれるAFユニットだが、拙僧が使っている限り現時点ではそうでもない。ただ、最短撮影距離が70cmなのは思うより不便である。これだと3歳児のバストショットを撮影するにも苦労する。廉価機のTプルーフが35cmまで寄れるのに不思議だが、どちらが競争が熾烈かと言えば普及機の方だと言うことだろうか。レンズに無理をさせないと言う思想なのかもしれないが、後裔機のコンタックスT3は、もっと寄れるようだ。フラッシュのパワーもプアである。ストラップが肩吊りで、しかも底辺に括りつけるようになっているのは、最近購入したシグマDP1が両吊りでこれが思った以上にしっくりくるので欠点とまでは言わないものの残念ではある。外装はチタンで指に心地よい。以降の高級コンパクトカメラの基軸になっている。レリーズボタンは人工サファイアだそうだ。こう言った一見どうでもよいことも、高級コンパクトカメラには必要なプロパティなのであろう。
                ☆           ☆
 拙僧の駄眼でレンズを評価するなどは笑止だと思っており、そういうことはなるべくコンテンツでは触れないことにしているのだが、本カメラはボディが多少ハテナでもレンズさえ良ければよいといった属性を持つため触れざるを得ない。38mmという焦点距離はやや中途半端にも感じるが、フジカやコニカのコンパクトカメラでも採用されるメジャーなものだ。そもそも、Syari殿のブログでフジカGERのモノクロの作品を拝見し、フジカの38mmが欲しいと思って探していてのである。ネットオークションでも運がよければフジカGERなど捨て値だが、できれば地元のジャンク籠で格安で手に入れたい。そうこうするうちに本カメラのゾナー38mmに出合ってしまったのである。とんだ高額買い物になってしまった。
 拙僧はポジではあまり撮影し無いのでカラーネガとモノクロの印象を紹介するが、初めカラーネガを0円プリントに出して結果が返って来たときは失望した。フラッシュ撮影のカットがどうにもならないのは良いとしても、女性の肌の表現が粗い上にコントラストがきつく、シミやシワを誇張して再現しているのだ。ちょっと妻に見せるにのは抵抗があるほどである。勿論、拙僧の妻はいい歳なので誤魔化せないのは事実としても、4歳の姪の肌にも赤い斑点が現れる次第である。これは困ったなと思ったが0円プリントの焼き加減かとも思い、試しにネガをスキャナーで読み込むと斑点は消えた。それどころかなかなかの発色とボケ具合である。成るほどと膝を叩いた次第だ。ただ、やはり妻ほどの年齢になるとクスミなどは隠せず、こういった場合解像が抑え気味のタクマーの方が適切であろう。万能レンズではないな。モノクロで撮影したものは、まだプリントしていない。モノクロはプリントして初めて評価できる物なので、ネガをスキャナーで読み込んだだけで語るのは適切で無いが、暫定的に感想を述べるとやはり適度なコントラストで暗部も簡単にはつぶれない。ちなみに比較したのはコシナ28〜200mmF3.5〜5.6なので性格は大分異なるが。もっとも、コントラストは期限切れのプレスト400を使用したので、多少影響があるのかもしれないが、眠いようなコントラストにはならなかった。ピントもシャープである。ただ、繰り返しになるがモノクロは自分で焼いてこそ階調の出方や適度なコントラストが分かる物なので、これについては何れ書き足すことになるだろう。
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 MIXIで知り合った名古屋の若い方々の撮影会に参加することがある。先日、本カメラを持参したら。フジのナチュラと間違えられた。彼女がナチュラを持っているのでそう思ったらしいのだが、MZ−7をメインにする平成生まれの彼女にすればコンタックスなどと言うブランドは未知でマイナーであるらしい。しかし、フジのフィルム生産の大幅縮小が噂される現在、コンタックスブランドの消滅より、高額なISO1600のカラーネガを元気に日本ブランドのコンパクトカメラに詰める若者が存在する方が断然将来は明るいだろう。
 ツアイスのブランドはそれを指示するフォロワーの思惑は兎も角、様々な形で残るようだが、コンタックスというブランドは当面復興する気配は無い。それでもフォクトレンダーの復興のように、何時かは不死鳥のように甦るだろう。ただ、そのベースになるのが我が国であるかどうかは、日本の主要家電メーカーの売上を束ねてもサムスンに負けている現在では不安定な物である。

 では、撮影結果をご覧頂きたい。
 では、ソウル編もご覧頂きたい。
 では、ローマ/フィレンツェ編もご覧頂きたい。

(了:2010/2/4)

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