千代田光学 ミノルタ16Pについて


minolta16P
ミノックスの兄貴分と言った感じで、手に取ると意外と存在感がある。
パッと見が110判廉価カメラに見れてしまうが、分かる方には分かる。

☆ジャンク度☆
不具合無し
撮影可能


minolta16P minolta16P
構造は110判廉価カメラと同様だが、質感が違いますよ。

minolta16P minolta16P
 レンズは3群3枚のロッコール25mmF3.5。
 固定焦点(パンフォーカス)なのが惜しい。


minolta16P minolta16P
 シンプルで見やすいファインダーだが、フレーミングは大体である。


minolta16P minolta16P
 ISO感度と連動したガイドで絞りを決める。
 露出計は無い。シャッターは1/100の固定。


minolta16P minolta16P
 造形は丁寧ですよ。
 千代田光学時代というのも萌える。


minolta16P minolta16P
 フィルム室はミノックスで見慣れた感じ。

 ミノルタの16mmカメラは、以前に1度だけ定期偵察内のキタムラで転がっていたことがある。金属製ボディに丁寧な造形は魅かれたものだが、なにせ16mmフィルムが全盛だったのは拙僧が生まれる前であり、とっくにフィルムの供給は途絶えていた。なのでスルーしたのである。ところが、ボルタ趣味を嗜んでから脳の箍が外れてしまったのが(いや、脳は前から問題を生じていると自覚しているのだが)16mmカメラを使いたい、いや、使うね!と、ややこしい病気を発症してしまう。16mmフィルムの作成と環境作りはコンテンツをご覧いただきたい。丹念にネットオークションを眺めると、カメラは100〜1000円くらいで、そこそこ綺麗でひとまず使えそうなものが転がっているのだが、フィルムカートリッジが高いのである。拙僧はカートリッジの付いた物を落札したつもりなのだが、肝心の巻き上げ用スプールが欠品だったので、結局、カメラ本体の数倍の価格帯で未使用フィルムを確保する羽目になった。
                 ☆           ☆
 さて、ミノルタ16Pである。ネットオークションで最も見かける16mmカメラが本カメラである。ミノルタ16mmカメラの歴史は1950年に登場したコーナン16オートマットに遡る。関西に甲南研究所というメーカというか、多分、カロッツェリアのような工房があり、プッシュ・プル式の魅力的な16mmカメラを製造していた。安定的な部品供給先として当時の千代田光学(ミノルタ)に打診した所、千代田光学側でも16mmカメラを検討中であり、友好的なコラボレーションの実現に至ったというのが通説である。構造的にミノックスに似たコーナン16や初期のミノルタ16は、確かにメカニカルな点で言うと魅力的であった。しかし、素人目でも生産効率は悪そうで、価格帯もちょっと高めだった。なので、ユーザーの裾の根を広げるために、グッとシンプルにして価格を下げたミノルタ16Pが登場となる。1960年デビューだから、既に半世紀も前のカメラである。PはキヤノンPと同じ語源でポピュレールだろう。価格もミノルタ16(無印)が6500円だったのに対し、本カメラは3900円と大幅にダウン。ネットオークションの出現頻度からすると結構売れたのだろう。
 16mmフィルムを使用するカメラの歴史はかなり古い。しかし、自分で暗室を作ってフィルムを詰めるといった煩雑な作業をせずに済み、店頭でフィルムを購入し、現像も店任せで気軽に使えるようになったのはミノルタ16のカートリッジがある程度規格化してからだろう。16mmフィルムのフォーマットはマチマチで、国産16mmカメラの一方の雄であるマミヤ16もフィルムベースは同じでもカートリッジは共用できなかった。16mmカメラが盛り上がったのが1950年代から1960年代の前半であり、ミノルタ16シリーズの最後を飾るミノルタQTが登場したのが拙僧と同じ年の1972年である。小型カメラのジャンルとしては既にオリンパスペンもあったし、小型で使い勝手のいいカメラは多く登場していた。そもそも、特殊な使い勝手の16mmカメラはマニア趣向のゲリラ戦を戦っていた。それも、同じフィルム幅の110判フィルムの登場で終息に向かう。110判フィルムの使い勝手も16mmフィルムと大して変わらないと思うのだが、何しろ当時は巨大な帝国を率いていたコダックが、ラボ体制を整えて本気で戦争を仕掛けてきたのだから、勝負にならない。それでも、ミノルタは律儀に1990年代まで16mmフィルムを製造していたそうだ。
                 ☆           ☆
 さて、本カメラを手に取ってみよう。見てくれは廉価110判カメラに見えるが、アルミ製金属ボディの質感が格の違いを見せる。梨地の表面加工も美しく、半世紀の時間の経過を感じさせない。傷も少なく、いい金属を使っているのであろう。ビューファインダー を端に寄せたオペラグラススタイルのカメラがいつごろ登場したのかはよくわからないのだが、ミニチュアカメラとかディテクティブカメラは古くから欧州で盛んだったから、何かしらの起源モデルがあると思われる。ファインダーは素通しかと思いきや若干の倍率がかかっている。シンプルな構造ですっきりとした見え具合だが、デジカメの大型液晶ビュワーに慣れた方だと小さなのぞき穴を覗いているようでびっくりするだろうな。
 レンズはロッコール25mmF3.5で3群3枚。固定焦点(パンフォーカス)なのが残念である。ネガを見る限りは割と近い位置(2.5〜3mくらい?)にピントが合うようになっているようだ。絞るとそれなりにシャープだが、やはり遠景は弱い。露出計は非搭載である。ASA感度を設定すると天気ガイドが連動して回転し、適切な絞りの指標になる。ASAが10〜160までで、160の前が80なのも時代を感じるなあ。シャッターは1/100の単速なので、露出は絞りのみで調整する。ミノルタ16シリーズの中でも、かなり割り切ったプリミティブなカメラである。
 ボディを上面から見ると梨地アルミのマッスが、かつてのライターや時計と同様に男のアイテムとしてのステータスを感じる。高くて買えないから言うのだが、マミヤの上級機になると撮影と言う戦闘的な行為よりも、弄ることのできる博覧会の展示品という気がしてくる。エンボスの「minolta−16」のロゴもかっこいい。拙僧の個体はフィルムカウンターの窓ガラスが外れているが、これが外れた個体は多いようだ。巻き上げは背後のノブで行い、カウンターは20枚からの減算式である。0を過ぎてもレリーズはできるので、フィルムが残っていれば2〜3枚は余分に撮れる。特にレリーズロック機能は無いので、巻き上げノブでチャージした後だとポケットの中で無駄打ちの可能性はある。ミノックスや110判と同様、フィルムはカートリッジからカートリッジへフィルムが移動するので、巻き戻しの必要は無い。
                 ☆           ☆
 なんだか、味をしめてしまって110判もできる気がしてきた。110判の場合は1コマ毎にパーフォレーションがあるのだが、ペンタックスオート110などはパーフォレーションを使用しないらしいので、手持ちのジャンク110判フィルムを巻きなおせるのではと妄想に襲われている。
 このまま、バンタム判方面まで道に迷って、帰ってこれなくなるのが怖いが。

 
 撮影結果(モノクロ編その1)もご覧頂きたい。

(了:2011/11/19)

カメラメニューへ戻る
「意してプラカメ拾う者なし」へ戻る

inserted by FC2 system